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「主語を変える」という挑戦 スポーツ使って共創

FIFAコンサルタント 杉原海太

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サッカーのプロリーグ、Jリーグには「社会連携本部」という部署がある。そこに連なるワーキンググループのメンバーに2018年秋からなっている。JリーグとJクラブが推し進めるホームタウン活動を側面から支援するのが役目。その現場で感じることを土台にスポーツを取り巻く環境の変化について語ってみたい。

平成から令和に元号が変わることに乗って主張するわけではないが、ここに来て潮目の変化を感じる。

スポーツビジネスでいえば、平成の時代に大きく発展したモデルは、とにかく権利の受益者を限定することだった。ハードルをどんどん高くして「これを使えるのは御社だけ」という形で価値をつくり、値づけし、売りさばいてきた。放映権や公式スポンサーなどはその典型だ。

それはそれで今後も続くのだろうが、その弊害と呼べるようなことも目につく。一般のお客さんはスタジアム内でビデオも回せない、スポンサー以外の企業は自分たちの社員である選手の壮行会で「五輪」という言葉も使えないとか。権利ビジネスは排他性と表裏一体で、権利を買った企業に対してすら、実際に使おうとすると「あれもダメ」「これもダメ」とクギを刺される。

社会全体でスポーツをシェアする流れ

それに対して(Jリーグの社会連携プロジェクトもそうだが)、今、世に広がりつつあるスポーツの新しい形は、いろいろな人がスポーツとつながりを持てるようにハードルを低くし、スポーツを社会課題の解決に役立てるというアプローチである。パソコンを動かすソフトに高いお金を払う必要がなくなったように、皆でモノやコトを共有するシェアリングエコノミーが広がっているように、社会全体でスポーツをシェアする流れがこれから勢いを増すと感じている。

Jリーグの村井満チェアマンやJリーグの社会連携プロジェクトのリーダーを務める米田恵美理事はそれを「主語を変える」と表現する。

Jリーグは本邦初のサッカーのプロリーグとして26年前に産声をあげたが、その計画段階から地域密着やスポーツ文化の振興と発展、国際性の獲得などが理念として盛り込まれた。JリーグとJクラブは地域社会への貢献を「ホームタウン活動」と名づけ、実際にサッカー教室の開催、学校訪問、地元の商店街のプロモート等、ありとあらゆる活動をそれぞれのクラブと地域の特性に応じた形で展開してきた。

「主語を変える」とは、その行動主体をひっくり返すという意味だ。地域のためにJリーグが何かをするのではなく、地域の人々がJリーグやJクラブを使って何かをするという発想の逆転。自治体、地域住民、企業などが主語になり、スポーツを使ってできる「何か」を発掘する。彼らをステークホルダーに見立てた場合、それぞれを横につなげる。その際、クラブは人と人をつなぐハブ(車輪の中心)になるわけである。

一般社会でも、いろいろなタイプの人が集まり、コラボーレションすることで新しいイノベーションを生み出すことを「共創」、そういう場を「ラボ」と呼んだりするようになっている。Jリーグが社会連携プロジェクトとしてやろうとしていることも、それに近いものがあると感じている。

今後の共創、ビリヤードのイメージ

その方が効果的にいろんな立場の人がスポーツに関与できるし、立場の異なる人が交じり合うことで、新しい発想や新しい使い方を見つけやすい。キュー(木の棒)ではじかれた球が別の球をはじき、その球がまた別の球をはじく、そんなビリヤードのような姿がこれからの共創のイメージとして私にはある。

スポーツにとっても、これは非常に筋がいい話だと感じている。というのも、スポーツのクラブは地域社会において、半官半民的な公共財的存在であるからだ。ビジネスの側面はもちろん強いけれど、地域社会におけるシンボルとして自治体、企業、ファン(住民)、NPO(非営利団体)らとやり取りする機会が自然にある。そういうスポーツを触媒として使うことは合理的かつ、ごく自然なことに思えるのである。

スポーツを世の多くの人たちに「使ってもらう」という考えは、スポーツが本来持っている多面的な価値をもっと切り出すという挑戦でもある。

ワールドカップ(W杯)やオリンピック、パラリンピックで金メダルを取って、国威発揚につなげるとか、国民に活力や元気を与えるのも大事な仕事ではある。が、それもスポーツの価値の一面にすぎない。

スポーツには教育的価値もある。この20年はメディアへの露出による広告的価値が最大限に消費された。最上のエンターテインメントになり、放映権の価値が跳ね上がりもした。そこにこれからは「大きな社会課題の解決に何らかの形で役立てるツールになる」という新しい動きが加わるように思う。

健康増進、国際性、人と人をつなげるコミュニティービルディングなど、スポーツ界のど真ん中にいる人ほど気づいていない、あるいは軽視するスポーツの多様な価値。言葉は悪いかもしれないが、そこをもっと肩肘張らずに、いろんな人が"いじる"ことでスポーツの使い道はもっと広がる気がする。

FCバルセロナの関係者は最近、社会課題を解決するためにバルサというクラブ発のイノベーションを起こすと語るようになっている。これもスポーツやクラブが世の中に良い影響を与えるツールになり得ることに気づいているからだろう。

この流れはさらに強くなり、加速すると個人的には思っている。時代の要請がそこにあるからだ。多様なステークホルダーを巻き込みやすいスポーツの性格を考えれば、広告と放映権ビジネスに特化した「狭い使い方」は踊り場に来ているようにも感じる。

立ち位置は「社会をもっとよくする」

社会には今までの縦割りの思考では解決できない問題が山積している。少子高齢化や医療費の増大、地域の衰退など課題は複雑化する一方で、財源はない、人手が足りない、と障害も山積みだ。「行政に任せておけば、何とかしてくれる」という時代ではもはやないだろう。

社会課題の解決にはお金が必要になるが、少なくともスポーツは、いろいろなタイプの人が枠を超えてつながり、アイデアや知恵を出し合う場をつくることはできるはずだ。それはスポーツの産業化につながるような話ではないが、人と人との結びつきを深めることは、国内総生産(GDP)や売り上げのような指標はないけれど、その町で暮らすことの幸せにつながる話だろう。

素晴らしい選手を育て、集め、素晴らしい監督の下で質の高いサッカーを見せる、そこから収益を上げることがクラブの本業だとしたら、他の使い道には、どうしても"副業感"がある。だが、純粋にビジネス的価値(本業)を追求しても(限界に挑むことはもちろん大事だが)、欧州の5大リーグのようになれるかといえば、やはり難しい。しかし、社会をもっとよくするためのJクラブという立ち位置なら、世界のどこのリーグにも負けないものになれる可能性があると感じる。社会のニーズに合致しないものは廃れていく一方、ニーズに合致するものは発展していくのは世の道理なのだから。

共創といっても、互いに信頼があってこそ、つながることができる。Jリーグの素晴らしさは、そのベースになる信頼をこの26年間こつこつと培ってきたこと。この土台を使えるのは、平成の時代を生き抜いた先人たちの地道な努力のたまもの。だからこそ「主語を変える」というチャレンジができるのである。

 すぎはら・かいた 1996年東大院修了。コンサルティング会社を経て国際サッカー連盟(FIFA)運営の大学院を2005年に修了。06年からアジア・サッカー連盟(AFC)に勤めた後、14年から現職。FIFAの戦略立案に携わる。

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