ATMもシェアします、北海道銀と北陸銀が共同店舗
ほくほくフィナンシャルグループ(FG)傘下の北海道銀行と北陸銀行は15日、東京・日本橋でグループとして初めての共同店舗を開いた。別々だった店舗を1カ所に統合・集約し、エントランスやATM、応接室を共有する。ほくほくFGは道内で2行の店舗が重複するエリアの共同化も進める考えで、今回の店舗がモデルケースとなりそうだ。
「今後、2行のシナジーを一層高める象徴的な店舗だ」。15日、新店舗の開店を祝うセレモニー会場で、道銀の笹原晶博頭取は前のめりにこう述べた。北陸銀の庵栄伸頭取も「北陸と北海道に情報を提供するパイプ役のような店舗にしたい」と笑顔をみせた。
新店舗の入り口をくぐると、共用エントランスにはほくほくFGの看板があり、左を向けば道銀、右には北陸銀の窓口が控えている。窓口や行員の制服はさすがに別だが、ATMや応接室、行員が使う食堂や休憩室は共用。店舗の管理費は従来の半分で済むという。2行の情報連携を深め、事業承継やM&Aによる手数料ビジネスも伸ばす。
2行は現状、メインの勘定系システムを共有しているが、2023年には約100ある補完システムも全て1つに集約する。将来的には窓口の先の後方業務も共有化し、看板と窓口以外は全て共同化した店舗を作る構えだ。「2行それぞれが顧客提案を競い、サービス全体の質を上げる」(道銀の笹原頭取)という。
ほくほくFGが1日に発表した中期経営計画では、2行の支店が重複する北海道地区でも店舗の共同化を進める計画を示した。道内では札幌や旭川、釧路や帯広など主要都市のほぼ全てで2行の店舗が重複している。今回オープンした東京支店は先行事例となる。
ほくほくFGが誕生したのは04年。統合から10年以上経過した今になって大規模な店舗共同化を進める背景には、業績の落ち込みがある。2019年3月期の連結純利益は前の期比1%減の210億円と、3期連続で減ったもようだ。みずほフィナンシャルグループが前期に店舗の減損を計上するなど、実店舗の効率化や提案営業の強化は業界のトレンドといえる。
とはいえ、2行が従来進めてきた店舗戦略には隔たりがあった。道銀が地盤とする北海道以外の規模拡大に消極姿勢をとる一方、北陸銀は道内をはじめ関東や関西に複数の店舗を持ち、広域で収益を高めてきた。北陸銀のある幹部は「北海道の歴史で最初に支店を作ったのは、北洋銀行でも道銀でもない。北陸銀だった」と胸を張る。
市場関係者からは「道内で重複する北陸銀の営業機能を道銀に集約すべきだ」(国内大手証券)と、一本化を求める声もある。それでもほくほくFGは店舗の共同運営を掲げ、2行の共存共栄路線を崩さない。背景には、せっかく良好な関係を築いてきた道内の優良企業を簡単には手放したくない、という北陸銀の意地があるようにみえる。
(向野崚)