街の電力・熱、三井不と東ガスがまかなう 日本橋で
三井不動産と東京ガスは15日、東京都中央区日本橋室町周辺地域に電力と熱を供給する事業を開始したと発表した。再開発に併せ、都市ガスを燃料に電力と熱を作るコージェネレーションシステムを設置した。再開発区域内だけでなく既存建物を含む街全体に供給するのは日本初という。系統電力が止まってもガス発電で電力供給が可能で、災害に強い街づくりをめざす。
「災害時、街に電気を絶やさないようめざす」。三井不動産の菰田正信社長は15日、「日本橋室町三井タワー」(東京・中央)で日本橋室町周辺地域に対する電力・熱の供給システムに関する会見を開き、こう説明した。東京ガスの内田高史社長は「街で働く人、街を訪れる人が安心して快適に過ごせる街にするためにエネルギー面から取り組んだ」と語った。
同タワーは3月28日に竣工し、三井不が2014年から進めている日本橋の再開発を代表する地上26階の複合ビル。エネルギーの供給は両社が16年に共同で設立した三井不動産TGスマートエナジー(同)が手掛ける。
同タワー地下のプラント内にコージェネレーションシステムを置き、独自に電線を張り巡らせた。供給対象は日本橋室町周辺地域にある三越日本橋本店やオフィスビルなど約20棟、延べ床面積は約100万平方メートル。街全体への供給は日本初という。平常時、非常時ともにエネルギーの供給を行う。
同システムを活用したエネルギー供給の事例は、六本木ヒルズ(同・港)といった再開発地区であったが、供給範囲は区域内のみ。今回はプラントのスペースを確保することができ、電力と熱ともに使う商業施設が集積する好立地に恵まれた。
街で作った電力や熱を街で消費する地産地消につながる。ガスを燃料にして発電した電力と東京電力など系統電力をプラント内で混合し、需要量に応じて必要十分な電力を効率よく供給する。発電時に生じる熱も余すことなく供給し、冷暖房や給湯に有効活用することで省エネ・省二酸化炭素(CO2)に貢献する。
非常時も建物の事業継続計画(BCP)に必要な電力(年間ピークの50%)の供給を行うことが可能だ。発電に使う中圧ガスは災害時の信頼性が高い。中圧ガス導管はガス漏れを起こしにくく、基本的にガスの供給を停止することはない。一方、従来の非常用発電では3日間程度。利用者にとっては電力料金は従来と変わらず防災を強化し、三井不にとっては賃料を上げる効果が見込める。
今後、三井不が再開発を進める22年竣工予定の豊洲二丁目駅前地区(同・江東)など他のエリアでも両社は同様の取り組みを行う予定。菰田社長は「都心の重要拠点に未曽有の大震災にも負けない強靱(きょうじん)さを備え、サステナブルな街を作り暮らしを豊かにする」と語った。
(小田浩靖)