データ解析、日本が大役 ブラックホールを初撮影
「人類が100年かけた問題の最後の1ピースが埋まった」。日米欧などの国際共同研究グループが銀河の中心にある巨大ブラックホールの撮影に初めて成功したと発表した。日本が海外で運用する望遠鏡が活躍し、データの解析や撮影対象となったブラックホールの研究にも日本人研究者が大きく貢献した。
10日夜、東京都内で開かれた日本の研究チームの記者会見。チームを率いる国立天文台の本間希樹教授は誇らしげに語った。「たった1枚の写真だが、ブラックホールの存在を決定付けた」と胸を張った。
巨大ブラックホールの撮影を目指す国際研究プロジェクト「イベント・ホライズン・テレスコープ」には米国、ドイツ、オランダ、日本などの研究者200人強が参加する。成果は米国やベルギー、チリなど世界6カ所で同時に発表された。
今回撮影に成功したのはおとめ座のM87銀河の中心にある巨大ブラックホール。国立天文台の秦和弘助教が2011年にブラックホールの位置の特定に成功した。秦助教は、「世界でも日本人研究者がリードしてきた」とし、「今回の発見は宇宙の解明の大きな弾みになる」と意気込む。
研究グループはチリにあるアルマ望遠鏡をはじめ、米国、メキシコ、スペイン、南極にある電波望遠鏡を連動させ、地球サイズの巨大な望遠鏡を仮想的に実現した。アルマ望遠鏡は日本や台湾、韓国、米欧が共同で運用する。標高5千メートルにあるアンテナ群から山麓の施設に光ファイバーのケーブルで観測データを送る装置は国立天文台が開発を担当した。
8つの電波望遠鏡で観測したデータの解析には本間教授らが開発した手法が採用された。少ないデータから本質的な部分を取り出す「スパースモデリング」と呼ばれる数学的な手法を活用し、世界に散在する望遠鏡のデータを統合してブラックホールの鮮明な画像を作る手法を編み出した。