米大手7行のCEOが議会証言、管理体制など追及受ける
【ニューヨーク=宮本岳則】米大手銀7行の最高経営責任者(CEO)が10日、米議会下院の公聴会に呼ばれ、金融危機後の経営について証言した。米銀トップがそろって出席するのは危機の責任を問われた2009年2月以来、約10年ぶりだ。与野党議員から経営管理体制や地域社会への貢献、中小企業への融資などについて追及を受けた。20年の米大統領選を控え、政治からの圧力が強まりそうだ。
米民主党が過半を握る米下院の金融サービス委員会が公聴会を開いた。米銀大手JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン氏やゴールドマン・サックスのデービッド・ソロモン氏、シティグループのマイケル・コルバット氏ら7人が招集された。米国東部時間午前9時(日本時間午後10時)から始まった会合では、数十人の与野党議員が質問に立ち、米銀トップとのやりとりは途中の休みを挟んで約7時間に及んだ。
公聴会の主題は「金融危機後10年、グローバルのシステム上重要な銀行の再点検」。米銀大手トップを招集する直接のきっかけは米銀大手ウェルズ・ファーゴによる顧客への不正営業問題だ。顧客の承諾を経ずに銀行口座を開いたり、クレジットカードを発行したりする不正行為が発覚した。中小企業に対して不利な契約を押しつける問題もみつかった。行員の基本給を抑え、過度な成果報酬体系を導入したことが不正の引き金になったとの批判もあった。
現時点で金融システムに差し迫った危機は見当たらない。08年のリーマン・ショック後に成立したドッド・フランク法(金融規制改革法)で米銀は高リスク取引をできなくなり、財務体質の健全性は高まった。ただ優良経営とされてきた大手の一角、ウェルズで16年、消費者や中小企業保護の不備が発覚した。下院金融サービス委の委員長、マキシン・ウォーターズ議員(民主党)は公聴会で「(米銀は)規模が大きすぎて経営管理ができなかったり、地域社会への貢献が後回しになったりしている懸念がある」と指摘した。
米ウォール街は米格差社会を生み出す象徴として批判の矢面に立ちやすい。20年の次期大統領選を控え、消費者重視の姿勢をアピールしたい米民主党は今回、ウェルズ以外の米銀にも疑いの目を向けた形だ。
米銀トップは経営の健全性や米社会・経済への貢献をアピールし、議員に理解を求めた。JPモルガンのダイモンCEOは声明文で「米国店舗の従業員給与を引き上げたほか、顧客サービスの人員を2倍に増やした」などと強調。米バンク・オブ・アメリカのブライアン・モイニハンCEOは中小企業や非営利団体への融資を手掛けるコミュニティー開発金融機関(CDFI)を通じて「手ごろな価格の住宅や公共施設、小規模事業者に15億ドル(約1650億円)以上、資金を提供してきた」と訴えた。
公聴会での議論は世界経済や環境問題、銃製造会社への融資など幅広いテーマに及んだ。混迷を深める英国の欧州連合(EU)離脱問題について、シティのコルバットCEOは「すでに証券業務を英国からドイツに移した」などと説明。他行トップも「合意なし離脱」への備えを進めていると説明した。モルガン・スタンレーのジェームス・ゴーマンCEOは「サイバー攻撃が金融システムにとって最大のリスク」と述べた。
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