近くに食料品店ないと思う人、認知症リスク1.65倍 大学調査
自宅近くに生鮮食料品が手に入る店が「全くない」と思う高齢者は、「たくさんある」と思う高齢者に比べて認知症のリスクが1.65倍だったとの調査結果を10日、東京医科歯科大や千葉大などの研究グループが発表した。研究者は「新鮮な商品を選んだり、献立を考えたりする過程が、認知機能に好影響を及ぼしている可能性がある」としている。
2010~13年の約3年間にわたり、65歳以上の高齢者約4万9千人を追跡調査した。
「家から1キロ以内に新鮮な野菜や果物が手に入る商店・施設はどれくらいあるか」との質問に対し、「たくさんある」「ある程度ある」「あまりない」「全くない」の4つの回答グループに分類。各グループ内で約3年間の追跡中に認知症となった人がどれくらいいるのかを調査した。
年齢や性別、経済・就労状況、同居の有無などの影響を調整した。その結果、近くに食料品店の数が「全くない」と回答した2665人のうち、9.9%(264人)が約3年の間に認知症になった。「あまりない」の発症した割合が7.8%、「ある程度ある」が6.1%、「たくさんある」が4.8%だった。
「たくさんある」に比べて、「全くない」は認知症になるリスクが65%高かった。「あまりない」は43%、「ある程度ある」は21%高かった。
調査した東京医科歯科大の谷友香子・特別研究員は「単純な店舗数よりも、高齢者本人が『行きたい』と感じる店があるかがより重要だ。食料品店に出かけることが認知症予防につながる」と分析している。
飲食店やコンビニエンスストア、公民館の数についても同様に調査したが、食料品店のような認知症リスクの差はみられなかったという。谷氏は「食料品店の少ない地域では、歩行が困難な後期高齢者向けに移動販売をするだけでなく、健康維持の観点から生鮮食品の仮設販売所をつくるなどの施策も求められる」と提言している。