ネタニヤフ首相続投に道、イスラエル総選挙
米の中東政策が一段と強硬に 地域に緊張
【エルサレム=飛田雅則】9日投開票のイスラエル国会(定数120)の総選挙でネタニヤフ首相が党首の与党リクードを軸に右派陣営が過半数の確保を確実にした。ネタニヤフ氏の首相続投の公算が大きい。同氏と親密な関係にあるトランプ米大統領はイスラエルを中東政策の軸としてイランやパレスチナへの対抗姿勢をより強め、地域の緊張を高めそうだ。
選挙はリクードに、新顔のガンツ元軍参謀総長らの中道野党連合「青と白」が挑む構図。選挙管理委員会が発表した開票率約99.8%時点での各党の得票率をもとに計算すると、リクードと「青と白」は各35議席となった。
「驚異的な勝利の夜だ」。ネタニヤフ氏は選挙後、商都テルアビブで有権者を前に獲得議席が改選前の30議席に比べ5議席増えることを念頭に勝利宣言した。リクードが連立を組むとみられる極右、右派、宗教の各政党からなる右派陣営は計65議席程度になり、解散前の連立与党の61議席を上回る。選管は11日にも最終結果を公表する。
検察が汚職疑惑で起訴方針を表明したことで苦戦が伝えられたが、ネタニヤフ氏は国民の最大の関心事である安全保障でイランやパレスチナへの強硬姿勢を約束し、逆風をはね返した。連立には極右も加わることが想定され、いままで以上に強気の対外姿勢をとりやすくなる。
ネタニヤフ政権に肩入れするトランプ氏は、中東政策を推進するため、イスラエルとの協力関係をさらに深める可能性が高い。イラン革命防衛隊を「外国テロ組織」に指定するなど、イラン包囲網を狭めようとしているトランプ政権は、イスラエルとサウジアラビアを2本柱としてきた。ただ米国内にはサウジに対して厳しい目を向ける動きもあるからだ。
2018年10月に著名記者殺害事件が起き、サウジの実力者ムハンマド皇太子の指導者としての信頼性を疑問視する声が出た。サウジは原油価格引き上げのため、ロシアなど他の産油国と協調減産を推進しており、トランプ氏自身もたびたび批判している。
ネタニヤフ氏はトランプ氏との特別な関係を利用し、イラン核合意からの離脱やイランへの経済制裁の復活を働きかけてきた。選挙での「公約」を守るため、米国にイランへより強い対応を求める可能性がある。一方、トランプ氏にとってもイランの脅威からイスラエルを守ることは、自身の支持基盤である米国のキリスト教福音派の利益にもつながる。
トランプ政権は近く「世紀のディール(取引)」と呼ぶ中東和平案を公表する見込みだ。米国はパレスチナの支援を停止・縮小するなど締め付けを厳しくしている。イスラエル寄りの和平案を提示することが想定され、パレスチナ側が猛反発することが予想される。イランも含め地域の混乱に拍車がかかる恐れもはらむ。