サウジアラムコ起債、11兆円の応募殺到
【ドバイ=岐部秀光】サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコが初めて発行する債券で100億ドル(1兆1000億円)の調達予定額に応募が殺到し、購入希望額が9日、1000億ドル(11兆円)に達した。新興国企業の債券としては空前の応募額だ。同国は2018年10月の著名記者の殺害事件で国際社会の批判を浴びた。アラムコの大型起債には、カネ余りの国際金融市場で運用難に直面する投資家の苦境が映る。
アラムコは調達予定額を当初の100億ドルから120億ドルに引き上げた。サウジ政府は記者殺害事件で広がった同国への敬遠ムードが解消に向かい、企業や投資家がサウジ市場に回帰することに期待している。実力者のムハンマド皇太子が進める大がかりな経済改革は外国企業の助けなしに進めるのは不可能だ。
アラムコは今回の起債に先立ち、財務情報を初めて公開した。18年の純利益は米アップルの倍近い1111億ドルに達した。財務の健全性に加え、足元の原油価格の回復がアラムコ信用力への評価をさらに高めている。
ロイター通信によると、発行額は3年債が10億ドル、5年債が20億ドル、10年債と20年債、30年債がそれぞれ30億ドル。利回りは政府債を下回る水準におさえられた。これは国営企業であるアラムコに対する市場の評価がサウジ政府への評価を上回ったことを意味する。
アラムコは起債で調達した資金を用いて、国営の石油化学大手サウジ基礎産業公社(SABIC)を買収する計画だ。