投球の幅広がる田中将大 第4・第5の球種磨く
スポーツライター 杉浦大介
ヤンキースの田中将大が、2019年の大リーグで順調なスタートを切っている。3月28日のオリオールズ戦は六回途中まで自責点1に抑え、自身初の開幕戦勝利を挙げた。4月2日のタイガース戦でも6回2/3を1失点と好投。打線の援護がなかったタイガース戦は勝ち星こそつかなかったものの、計12回1/3で防御率1.46は上々の結果といっていい。
とはいえ田中は、この2試合を終えて必ずしも満足そうではなかった。オリオールズ戦後には「これでストライクが取れるというボールがなかった」と述べ、タイガース戦後も「スプリッターがあまり良くなかった」と不平を漏らした。ただ逆にいえば、最高の状態でなくてもメジャーの強打者を抑えられるところに、30歳になった田中の能力の高さがあるのだろう。
今春のオープン戦でカーブ、カットファーストボール(カッター)といった自らの主武器ではない球種の向上をテーマの一つに掲げていた。ナックルカーブを磨き、カッターも数年前の好調時の感覚を取り戻そうと試行錯誤した。これらの球種は特に早いカウントで有効な武器になると考えている。
「それが勝負球になるわけじゃないけど、あるだけで、それを意識させるだけで、バッターが考えなきゃいけないボールが増える。それを意識させるだけでも違う」
カッターについてそう述べたが、カーブの使い方に関しても同様だろう。第4、第5の球種を磨くことで、田中の代名詞的な武器であるスプリッター、切れ味鋭いスライダー、そして真っすぐがより生きてくるのだ。
開幕戦ではカーブを全球数の10%以上にあたる9球投げ、随所で相手のタイミングを外した。タイガース戦は初戦でまだ少なかったカッターを8球投じ、ヒットにされたのは1球のみ。2試合を終えたところで、カーブの使用率は昨季の4.0%から8.2%へ、カッターは5.0%から5.9%へと増えている。
■メジャー6年目、最高のシーズンも
まだ2試合だけであり、田中はその日の状態、相手チームとの相性などから使える球を見極めるところもある。好投できた理由をこれらの球種だけに見いだすべきではなく、田中自身もまだ取り組みの途中であると話している。ただそうだとしても、春季キャンプ中からの狙い通り、引き出しの多さが投球の組み立ての貴重なアクセントになっている部分はあるのではないか。
メジャー6年目にしてより幅を広げる試みが功を奏すれば、相手にとって田中はさらに攻略が難しくなる。スプリッター、スライダーの調子も上がってくれば、楽しみはいやが上にも増してくる。すべてが良い方向にいけば、メジャー6年目にして最高のシーズンを送る可能性も十分にありそうだ。