韓国補選、野党善戦 政権幹部の投機疑惑響く
【ソウル=鈴木壮太郎】2020年4月の韓国総選挙の前哨戦と位置づけられた3日投開票の国会議員の補欠選挙では保守系野党の自由韓国党が予想外に善戦した。選挙戦の期間中、文在寅(ムン・ジェイン)政権幹部による不動産投機が発覚。不信感を強めた有権者が保守系支持に回ったとみられる。
「手に汗握る接戦だった」。慶尚南道・昌原(チャンウォン)の選挙区。3日深夜に当選が決まった革新系野党「正義党」の余永国(ヨ・ヨングク)氏の第一声に高揚感はなかった。開票終了直前まで自由韓国党候補にリードを許し、最後で逆転した辛勝だったからだ。
慶尚南道は伝統的に保守の地盤だ。補選があった2選挙区のうち、統営(トンヨン)の選挙区は自由韓国党が議席を守った。だが、昌原は例外だ。大手製造業の工場が集積するため労働組合の影響力が強く、労組が支持する正義党の「総本山」だ。革新系与党「共に民主党」は早々に独自候補の擁立をあきらめ正義党と一本化。下馬評は余氏の楽勝だった。
雲行きが怪しくなったのは3月下旬、大統領府の金宜謙(キム・ウィギョム)報道官の不動産投機疑惑が報じられてからだ。不動産投機を厳しく制限する文政権の高官が投機していたことに国民は怒り、金氏は3月29日に辞任した。
閣僚人事でも同じことがあった。国土交通相候補者も不動産投機の疑惑が浮上して辞退。科学技術情報通信相候補者は活動実態のない学会への参加が問題になり、指名を撤回された。
保守政党や財閥を「積弊」(積み重なった弊害)と批判する革新政権・与党の側も清廉潔白にはほど遠い。そんな失望感が日増しに強まったことが、昌原での大混戦につながった。
民主党は3日「今回の結果は民主党と正義党の共同の勝利だ」との立場を表明した。ただ、自由韓国党に接戦を許し、より革新色が強い正義党が勢いを増すことで板挟みになり、政府・与党の政権運営の自由度は下がりそうだ。
自由韓国党は朴槿恵(パク・クネ)前大統領の弾劾・逮捕でどん底に陥ったが、今回の善戦は来年4月の総選挙での反転攻勢の足がかりになりそうだ。黄教安(ファン・ギョアン)代表も次期大統領選の保守系候補としての立場を一歩固めた。