小田急、MaaS基盤開放を発表 他社の開発促進
小田急電鉄は4日、次世代の移動サービス「MaaS(マース)」向けに交通データを統合して活用できる基盤作りに乗り出すと正式発表した。ルート検索大手のヴァル研究所(東京・杉並)と共同で基盤を開発。地図や検索、鉄道やバスのリアルタイムの運行情報、タクシーなど車両予約の機能を統合し、他の鉄道会社や自治体などにも開放して利用を呼びかける。
「MaaS Japan(マース・ジャパン、仮称)」と名付けたデータ基盤の利用開放は2019年中に始まる見込みだ。まず、小田急が今秋にも計画する沿線の新百合ケ丘・町田や箱根でのMaaS実験に間に合うように基盤を開発する。その後他社にも開放し、他の鉄道会社や自治体などが使えるようにする。
データ基盤には、鉄道・バスの乗り換え案内やリアルタイムの運行情報、地図、タクシーの配車、カーシェアリングやシェア自転車の空き情報など10社以上の交通データをまとめる。外部からシステムに接続して使えるようにするための技術仕様「API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)」を活用して連携する。
交通データのほか、沿線の商業施設の割引優待、観光地の周遊用フリーパスなど、電子チケットの機能も載せる予定だ。切符を含めこれらチケットを従来の紙製からデジタル化できれば、日本語が不自由な訪日客も含め利用者にとって使い勝手が高まる。販促を狙う事業者にとっても管理コストや手間の軽減につながる。
MaaSは自動車など移動手段を保有せず、必要な時だけ有料で利用するサービスの総称だ。スマートフォンで移動手段の検索や予約が手軽にでき、料金の定額制も含め比較的低コストで利用できるのが特徴。先行する欧州では、マイカーから公共交通へのシフトを促す効果も上がっている。
ただ、MaaSを実施するためにデータ連携の仕組みを一から開発すると多額の費用がかかるとされ、参入の障壁になっていた。小田急の仕組みを使えば、地図情報の利用料やシステム改修料など少額の負担で済む。小田急はもともとヴァル研究所などと共同で、自社の沿線向けのMaaSアプリを開発していた。
訪日客の増加などを受け、国土交通省もMaaSの普及を後押ししている。都市部はもちろん、過疎化が進む地方の交通網の維持にも役立つとみているからだ。一方でサービスが乱立すると連携の手間やコストがかかる懸念も強い。小田急の基盤開放はこうした課題を克服し普及を後押しする契機にもなりそうだ。