地銀再編、再編後も監視 未来投資会議で議論始動 罰則付きで独禁法の例外に
政府は3日に開いた未来投資会議(議長・安倍晋三首相)で、地方銀行や乗り合いバスの再編促進策を議論した。独占禁止法の適用に例外を認め、統合を促す方針だ。地銀再編で融資シェアが高まれば、貸出金利を過度に上げる可能性もある。資金の借り手らが不利益を受ける場合には罰則の適用も検討する。経営合理化の効果が高い同一県内の再編を促す環境が整備されそうだ。
未来投資会議は国や地方の成長戦略を議論するために設置された。今夏に政策の方向性をまとめる。地銀や乗り合いバスの再編を促す新ルールは、独禁法の例外規定を盛り込んだ新法か、独禁法適用時に重視する事項を盛り込んだ指針をつくる方針。与党とも調整したうえで、今夏の成長戦略に盛り込む。
政府は地銀やバスを地方のインフラを担う「地方基盤企業」と位置付け、その経営強化を成長戦略の柱の一つにした。人口減や少子高齢化による地方経済の衰退で経営環境が悪化。独禁法のハードルが高い同一県内の地銀やバスの再編を促すため、適用ルールの見直しを検討している。
3日の会議では、安倍首相が「シェアが高くなっても特例的に経営統合が認められるよう検討を進めていく」と方向性を示した。長崎県を舞台にしたふくおかフィナンシャルグループと十八銀行の経営統合では、統合の合意から公正取引委員会の承認まで2年以上かかり、この4月1日に統合した。内閣官房は公取委の統合審査が長期間に及んだ点を指摘。統合を承認するルールの透明化が必要との認識を改めて示した。
長崎県のように同一県内の地銀再編は経営合理化の効果が高い一方、地域で競争相手の減った地銀が有利な条件で融資できるようになるとの懸念も残る。資金の借り手ら金融サービスの利用者が不利益を受けないように、内閣官房は金融庁が再編後も貸出金利の推移などを厳しく監視する必要性も提起した。当局の是正命令に銀行が従わないことに備え、罰則規定も検討する。
乗り合いバスは共同経営を認める方向で議論した。バスは需要の高い市街地に運行が集中する一方、山間部などの過疎地は収益性の低さから路線の撤退が相次いでいる。
過疎地の運行を維持する方策は、市街地の収入を複数のバス会社で共有(運賃プール)し、それを原資に過疎地を運行する共同経営の考え方がある。価格競争が起きづらくなる点で独禁法に抵触するとの見方があり、共同経営の壁になった。
内閣官房は3日の会議で、運賃プールを認めて過疎地の路線を維持すべきだとの考えを示した。共同経営を取り入れたのに路線を維持しないバス事業者には、共同経営の認可を取り消しする規定も検討する。
地銀やバス事業者が再編しやすい規制環境をつくっても、地方経済が衰退するなかでは一時的な処方箋にすぎない。地域インフラを維持するには、金融とIT(情報技術)を融合させたフィンテックや自動運転技術の開発といった生産性を高める経営改革も不可欠だ。