サウジアラムコ、世界最大の利益企業に 18年は12兆円
【ドバイ=岐部秀光】サウジアラビア国営石油会社サウジアラムコは1日、初めて詳細な業績を発表し、2018年の純利益が1111億ドル(約12兆4000億円)に達したと明らかにした。上場企業として世界最大であるアップルの約600億ドルを大きく上回り、米石油メジャー、エクソンモービルの5倍以上に相当する。
アラムコは初の債券発行を控え、投資家向けに業績を公表した。18年の税引き前収入は2000億ドルを超す。起債により約100億ドルを調達し、国営の石油化学大手、サウジ基礎産業公社(SABIC)の株式を政府系ファンドから買い取る資金に充てる。買収に必要な額は約690億ドル。
米格付け会社ムーディーズは1日、アラムコの格付けを「A1」とし、「トリプルA」のエクソンモービルと差を付けた。ムーディーズは「アラムコは生産規模の大きさや豊富な化石燃料資源などトリプルAに値する性質を多く持つ」と指摘する一方、「政府との密接なつながり」が評価を下げたと説明した。
サウジの実力者であるムハンマド皇太子はアラムコの企業価値について2兆ドルを上回ると指摘している。市場ではサウジ側のアラムコ評価が過大だとの見方も出ている。
皇太子はサウジ改革の目玉としてアラムコの内外市場での新規株式公開(IPO)を準備していたが、事実上の棚上げに追い込まれたもよう。評価をめぐる市場とのギャップもIPOが難航する理由の一つとみられる。昨年10月にサウジ人著名記者の殺害事件が起き、ニューヨークやロンドンでのIPOは当面難しいとの見方が大勢だ。
アラムコの18年の原油生産量は日量1030万バレル。サウジは石油輸出国機構(OPEC)の盟主として、ロシアなどOPEC非加盟の主要産油国との協調減産を主導しており、持続可能な最大生産能力の1200万バレルを下回っている。
生産量の38%はアラムコの下流ビジネス部門が消費した。アラムコはSABIC買収とは別に、本体としても下流部門への戦略的な投資を進めており、総合的な石油化学会社への脱皮を急いでいる。
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