ボーイング補助金継続は不当 WTO判決、EUが勝訴
【ロンドン=細川倫太郎】航空機大手を巡る欧米の通商摩擦に絡み、世界貿易機関(WTO)の紛争処理で最終審にあたる上級委員会は28日、米国による米ボーイングへの補助金継続を不当とする最終判断を下した。欧州連合(EU)の訴えを認めた。EUは報復関税を発動する可能性がある。
WTOは2012年に米国による補助金をルール違反と認定。EUはその後も、米が補助金を継続していると主張していた。これに対し、米は是正措置を講じたと反論。今回の判決で上級委は、ボーイングの拠点がある米ワシントン州の税制優遇措置が継続していたと指摘。欧州エアバスの業績にマイナスの影響を与えたと判断した。
米国とEUは04年から、ボーイングとエアバスに対する補助金の違法性を巡り争ってきた。米もEUを提訴し、上級委は18年、欧州によるエアバスの補助金の継続を不当とする最終判断を下している。約15年にわたる紛争は米欧の痛み分けとなった。
今後は米・EUによる報復措置が焦点となる。補助金が与えた損害に対し、報復措置を取ることができる。EUで通商政策を担当するマルムストローム欧州委員は28日、判決について「とても重要だ」と歓迎した。米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は「米国はEUほど大規模で有害な補助金は出していない」と指摘した。