米連邦地裁、独バイエルに88億円支払い命令 除草剤訴訟
【ニューヨーク=西邨紘子】独バイエル子会社の米モンサントが製造した除草剤「ラウンドアップ」の発がん性を巡る訴訟で、カリフォルニア州連邦地裁の陪審は独バイエルに賠償金など8000万ドル(約88億円)の支払いを命じる評決を出した。発がん性リスクの警告を怠ったことが過失に当たると認めた。バイエルは控訴する方針だ。
同州地裁の陪審は27日、バイエルに賠償金500万ドルと懲罰金7500万ドルの支払いを命じた。原告のがん患者はラウンドアップの長年の使用により悪性リンパ腫を発症したとして、メーカーのモンサントを訴えていた。
バイエルは判決を受けた声明で、ラウンドアップの主成分であるグリホサートについて「過去40年間にわたる幅広い科学的な研究と、世界の規制当局による(安全性)支持の重みを覆すものではない」と主張。今後も法廷で争う構えだ。
グリホサートは植物の成長に必要な酵素の働きを阻害する働きを持つ。モンサントが70年代に商品化し、農業用から園芸用まで幅広く使われている。バイエルは18年6月に総額630億ドルでモンサントを買収した。
グリホサートの発がん性については内閣府食品安全委員会や米環境保護庁など各国当局が否定的な見解を出してきた。ただ、2015年に世界保健機関(WHO)が同成分を「ヒトに対しておそらく発がん性がある」と分類したことがきっかけとなり、健康被害を訴える訴訟が相次ぎ起こされている。原告数は1月時点で約1万1200人に達した。
カリフォルニア州連邦地裁の陪審は18年8月にも、別の訴訟で同様にモンサントがラウンドアップの発がん性リスクの警告を怠ったとして2億8900万ドルの支払いを命じた。