ソニー平井会長が退任 社長交代から1年「卒業する」
ソニーは28日、平井一夫会長(58)が6月で退任すると発表した。現社長の吉田憲一郎氏と交代してから1年が経過し、新しい経営体制への移行が進んだと判断。「ソニーグループから卒業する」とコメントした。今後はシニアアドバイザーとして経営陣に助言する。
平井氏は2012年3月期に巨額の最終赤字を計上後に社長に就任。15年3月期は上場後初めて通期で無配とするなど業績不振が続いたが、構造改革を断行。画像センサーの需要拡大などの追い風も受け、社長を退任した18年3月期は20年ぶりの営業最高益となった。
ソニーの経営を巡っては、米国の「GAFA」などとの競争に勝ち抜く戦略策定は道半ばだ。市場が伸び悩むスマートフォン(スマホ)事業のてこ入れなども課題として残る。
平井氏は音楽事業のCBS・ソニー(現ソニー・ミュージックエンタテインメント)に入社し、海外でゲーム事業に携わるなど当時のソニーでは非中核事業を歩んだ。社長就任後も「エレクトロニクスがわからない」などとの批判も受けたが、子会社から現社長の吉田氏らを呼び戻して構造改革を推し進めた。
平井氏は社長交代時にも「会長に就くのは、吉田氏と取締役会の要請を受けたため」と説明し、長く会長職を続ける意向はなかったもよう。退任も本人の申し出だ。
社長退任後は会社に姿を見せるのは週に1~2回程度だった。ダボス会議などへの出席はあるが経営の執行には関わらず、吉田氏ら新体制に配慮する姿勢を示してきた。
平井氏の代わりに社内からは十時裕樹最高財務責任者(CFO)が取締役に就く。取締役会議長は社外取締役任期を満了する中外製薬会長の永山治氏に代わり、東京海上ホールディングス会長の隅修三氏が就任する。
かつてソニーではOBが経営陣に注文をつける時期もあった。平井氏は社長退任後1年で会長職から降り、現経営陣が一段と仕事をしやすい環境をつくる。