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劇的に進歩した日本サッカー 私的、平成振り返り

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平成が間もなく終わろうとしている。日本サッカーが急成長を遂げたこの時代を自分の体験に引き寄せながら振り返ってみたいと思う。

昭和から平成に移り変わるころ、西暦でいうと1989年1月に自分は何をしていたかというと、全国高校サッカー選手権の会場巡りをしていた。1月6日の準々決勝、天皇陛下が崩御されて2日延期になった9日の準決勝、10日の決勝ともリクルート活動にいそしんでいた。

私が当時所属していたヤマハ発動機のサッカー部に専属のスカウトなどいなかった。個人的につながりがある高校や大学のサッカー部から選手が送り込まれ、毎年10人単位で選手を社員として採用していた。有望選手とセットで入社する選手もいたから、どうしても数が膨らむのだった。

そうやって採用された中には入社から1年、2年で選手人生にピリオドを打つ者もいた。選手を辞めても戻る職場があるから生活はしていける。サッカー部の側から見ても、戻す職場があるから「育てられなくて申し訳ない」という気があまり起こらない。終身雇用の枠の中で移籍など考えられない時代でもあった。

そういう環境に物足りなさを覚えた私は、小長谷喜久男監督(当時)に「大量採用はやめて、とびきりの選手を5人だけ採って大事に育てましょう」と進言した。「誰がスカウトをやる?」と聞かれ、言い出しっぺの「自分が」と答えた。それがコーチ兼スカウト業の始まりだった。小長谷監督の下で採用した選手に伊達倫央(筑波大)や東川昌典(国士舘大)、杉本雅央(順大)、中山雅史(筑波大)らがいる。

世界基準知ったイタリアW杯

90年にイタリアで開かれたワールドカップ(W杯)を開幕から決勝まで約1カ月間、つぶさに視察させてもらったのも大きな出来事だった。毎日のように移動しては試合を見て、「全然足りてない」と世界との距離に衝撃を受けた。私の口癖である「世界基準」の原型はここでできあがったように思う。

サッカーを取り巻く環境が激変したのは93年春のJリーグ創設だった。静岡県からどこがプロリーグ参加に名乗りを上げるかとなったとき、日本リーグ(JSL)時代のライバルだった本田技研にその気はなく、ヤマハの独壇場になると思われた。そこに現れたのが清水エスパルスだった。

当時のヤマハは87-88年シーズンにJSL1部初優勝を果たすなどの強豪。ジュビロ磐田に変わっても出資企業としてクラブをがっちり支えてくれることになっていた。実態のない清水より有望なのはこちらと思っていたら、Jリーグが10クラブの発足メンバーとして選んだのは清水だった。

 親会社を持たない市民クラブ、サッカーどころの清水の選手を集める地域重視のチームづくり。そういうアピールがJの清新なイメージと合致したのだと思う。

91年2月の正式発表を前に、Jリーグの要人から事前に落選の連絡を受けたサッカー部部長の荒田忠典さんが「俺も辞めたいよ」と漏らしたときの意気消沈した姿は今も忘れられない。「でもな、おまえたちや選手のことがあるからな。ここから頑張るよ」

1年遅れでもJリーグに参入することができ、磐田が黄金時代を築けたのは、荒田さんの尽力なくしてはありえなかった。おそらく、今あるJクラブのすべてに、荒田さんのような身を捨ててクラブの立ち上げに尽力された方がいることだろう。そのことは時代が昭和から平成に、平成から次の元号に変わっても、決して忘れてはいけないことだと思うのである。

92年になって日本サッカー協会から「ユース代表のコーチをやらないか」という連絡が入った。「監督は西野(朗)だよ。2人で若い選手の面倒を見ろ」と。西野さんとは日本代表で一緒にプレーしたことがあった。これを受けたことがサッカー人生の転機になった。

フル代表で対戦相手を分析

ナショナルチームのコーチングスタッフに入ると、手が足りないのでフル代表のためのスカウティング活動にも従事した。当時のフル代表の監督はオランダ人のハンス・オフト。日本サッカー協会が初めてプロ契約を交わしたオフト監督からはノート2ぺージにわたって事細かに書かれたチェックシートを渡され、現地に飛んではビデオを回し、対戦相手の分析に努めた。

93年のW杯米国大会アジア最終予選。日本が最終戦でイラクに引き分けて初出場を逃した、いわゆる「ドーハの悲劇」のときも、偵察部隊の一員として現地にいた。

10月28日の最終日は3試合が同時刻スタート。私は「スカウティングをやっているから両チームのことをよく知っているだろう」と団長だった川淵三郎Jリーグチェアマン(当時)に命じられ、韓国対北朝鮮のテレビ解説をすることになった。

状況が状況だけに目の前の試合より、日本対イラクの進行が気になって仕方ない。試合終盤になって放送席の私に向かってディレクターが右の指で「2」、左の指で「1」と知らせてくれる。日本が2-1のままリードしている。「ついにW杯に行ける」。そう思って安心していたら、ディレクターの指が2本ずつに変わった。「Vサイン?」。違った。2-2で追いつかれたという意味だった。

 ぼうぜんとしてチームの宿舎に戻った。ドーハの長い夜の始まりだった。オフト監督は「あと5秒」「あと5秒でW杯に行けたんだ」と繰り返す。オフト監督、清雲栄純コーチ、ハーフナー・ディドGKコーチ、西野さんらと一つの部屋に集まり、朝までずっと話しこんだ。

西野さんと私はユースからそのまま持ち上がり、96年アトランタ五輪代表を目指すチームを任された。選手たちと合言葉にしたのが「歴史を変える」だった。

メキシコ五輪以来、28年ぶりの出場を現実にできたのは、Jリーグの影響はもちろん絶大だ。サッカーでメシが食べられる幸福とその裏返しの責務を選手がしっかり受けとめるようになった。素晴らしい外国人選手がやって来て、Jリーグで選手を厳しく鍛えられるようになった。強化費が増え、アンダーエージから国際経験をたっぷり積めるようにもなった。

95年のワールドユース(現20歳以下W杯)にアジアの壁を越えて16年ぶりに出場できたのもJリーグ効果だろう。チリ、スペイン、ブルンジと戦って1次リーグを突破、ベスト8ではブラジルと1-2の接戦を演じつかんだ自信が、その後代表の主力となる中田英寿や松田直樹らをどれだけ大きく伸ばしてくれたことか。

「ドーハの悲劇」という究極の痛み。アジア王者ですら行けないW杯の厚く、高い壁。試合の最後をどう終わらせるか。突きつけられた課題。せこい時間稼ぎかもしれないが、時間帯と状況によって「反則されたら、そこでしばらく倒れておけ」、GKには「シュートが外れたボールは自分で取りに行け」というようなことも指示した。残り5秒を無事に終わらせるために。

選手育成にさらなる投資を

「ドーハの悲劇」から26年、アトランタ五輪出場から23年、フランス大会のW杯初出場から21年になる。あのころ、イタリアのセリエAやドイツのブンデスリーガ、イングランドのプレミアリーグの優勝チームに日本の選手がいるなどということを、どれくらいの人が想像できただろう。中田(ローマ)や長谷部誠(ウォルフスブルク)、香川真司(ドルトムント)、岡崎慎司(レスター)はそれを成し遂げた(岡崎以外の所属は優勝した当時のもの)。

次の時代の目標は、欧州チャンピオンズリーグの優勝争いに絡める選手を何人も輩出することだろう。それができたら、日本サッカーのグレードはもっと上がる。W杯のベスト8も夢でなくなる。そのためには、これまでどおり、いや、これまで以上に、選手育成という未来への投資を惜しんではならないと思う。

(サッカー解説者)

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