テンセント10~12月期3割減益 党の意向、業績を左右
【香港=川上尚志】中国のネットサービス大手、騰訊控股(テンセント)が21日発表した2018年10~12月期の決算は、最終利益が前年同期比32%減の142億2900万元(約2350億円)だった。最終減益は18年4~6月期以来2四半期ぶりとなる。稼ぎ頭のゲーム事業で、当局の規制が強化されたことが響いた。
10~12月期の売上高は28%増の848億9600万元だった。「スマートフォン(スマホ)決済の利用者や取引金額が大きく伸びた」。馬化騰・最高経営責任者(CEO)は、決済や金融事業が好調だったと説明した。
一方、売上高の約3割を占めるゲーム事業は伸び悩んだ。スマホなどネット向けゲームの売上高は12%伸びたが、利益率の高いパソコン向けが13%減った。同社は事業別の損益を公表していないが、ゲーム事業の伸びが鈍化した上に採算も悪化し、全体の収益を押し下げたとみられる。
ゲーム事業の足かせとなったのが当局の規制強化だ。中国当局は18年3月から12月にかけゲームの審査を凍結し、原則として新作を発売できなくなっていた。
青少年への悪影響を懸念した共産党の意向が働いたとされる。審査の凍結後、テンセントは独自に未成年に対するゲームの利用制限のアピールを重ね、当局の意向に沿った取り組みが事実上求められた格好になった。
18年12月のゲーム審査再開後も審査待ちの作品が滞っている。テンセントのゲームは一部が発売認可を受けたが、大型作品については審査待ちで、現在は無料で公開し収益につながっていない。「19年はゲームの大型作品の認可が無事に出るかが最も業績を左右する」(中国の中堅証券)
中国当局の意向は民間企業の経営を左右する。海外M&A(合併・買収)を巡り、中国政府は2000年代から「走出去(海外に打って出る)」のもと奨励した。ただ17年ごろから資本流出を警戒しM&Aに厳しい目を向けるようになる。中国の商業不動産大手、大連万達集団(ワンダ・グループ)や複合企業大手の海航集団(HNAグループ)は積極的なM&Aで知られたが、資金調達の道を断たれ資産売却を加速する羽目になった。