11知事選、与野党対決色薄く 「弱い野党」映す
4県は保守分裂
統一地方選の前半戦となる11の道府県知事選が21日、告示された。与野党各党は夏の参院選の前哨戦と位置づけるが、与野党が直接対決する構図は北海道のみ。与野党が現職に相乗りする選挙も多い。野党の弱さを反映して危機感の薄れた自民党では、福井、島根、徳島、福岡の4県で候補者を一本化できず分裂選挙となった。夏の参院選で地元組織にしこりを残す懸念がある。
11知事選のうち与野党直接対決となるのが北海道だ。自民、公明両党が推す前夕張市長の鈴木直道氏と立憲民主、国民民主、共産各党などが推す野党統一候補の元衆院議員、石川知裕氏が対決する。新人同士の対決は16年ぶりだ。
自民党の二階俊博幹事長が19日に現地入りした。自民党は一部道議が地元出身の官僚の擁立に動き、鈴木氏の擁立には曲折があった。一枚岩となれるかがカギを握る。
野党も立民の枝野幸男代表が15日に函館市などを訪れ「最重点で力を入れて戦う首長選だ」と訴えた。
急きょ統一地方選前半戦に加わったのが、大阪府知事・大阪市長の「大阪ダブル選挙」だ。大阪府知事の松井一郎氏が24日告示の市長選に、前大阪市長の吉村洋文氏が府知事選に出馬。大阪維新の会が掲げる「大阪都構想」の是非を問う。
維新に自民、公明両党などの陣営が挑む構図だ。都構想に反対する自民党は元副知事の小西禎一氏を擁立。21日に大阪市で街頭演説した自民党の二階氏は「東京に負けない大阪にするためにがんばろう」と呼びかけた。国政で自民、公明両党と対立する立民、共産両党は小西氏を自主支援する。
自民党にとって悩みの種は保守分裂となった4つの知事選だ。福井、島根、徳島、福岡4県で候補者をまとめられなかった。
福岡県は3選を目指す小川洋氏に、新人で元厚生労働官僚の武内和久氏が挑む。小川氏はこれまで支援を受けた地元選出の麻生太郎副総理・財務相との関係が悪化。麻生氏や福岡県連が武内氏の推薦を求めた。党本部は麻生氏の意向に配慮し、武内氏を推薦した。共産党役員で新人の篠田清氏も立候補した。
故竹下登首相が強い基盤を築き「竹下王国」と言われた島根でも分裂選挙となっている。現職の引退に伴い、県連は元消防庁次長の大庭誠司氏を推薦したが、反発する若手県議らが元総務官僚の丸山達也氏を擁立。元同県安来市長の島田二郎氏も立候補し、3分裂した。共産党推薦で政治団体副代表の山崎泰子氏が3氏に挑む。
自民党本部は当初、大庭氏を党議拘束のかからない支持にとどめていたが、県連の支援体制が強まったと判断。支持から推薦に格上げした。
福井県は5選を目指す西川一誠氏に対抗し、自民県議らが元副知事の杉本達治氏を擁立。党本部は杉本氏を推薦した。推薦は党議拘束がかかり、他候補を応援すれば処分対象になる。共産党新人の金元幸枝氏も立候補を届け出た。
徳島県は県連の推薦を受けて5選を狙う飯泉嘉門氏と、多選批判を掲げる元自民党県議の岸本泰治氏が立候補した。党本部は現職への推薦は3選までとする内規を踏まえ、推薦も支持も出さずに静観する。共産党は元同県小松島市議の天羽篤氏が立候補した。
4県はいずれも自民党の支持が強い地域だ。地元組織の分裂が参院選の支援体制に影響しないかとの懸念がある。国政選挙の実動部隊となる地方議員の士気に影響する可能性があるためだ。甘利明選挙対策委員長は「全国の組織に危機感が薄れているのかもしれない」と指摘。参院選に向けて「しこりがあるなら早く解消できるよう努力したい」と語った。
神奈川、奈良、鳥取の3県は現職候補に与野党が相乗りし、対決色が薄まった。有権者の選択肢が限られ、投票率が伸び悩む可能性もある。
4年に一度の統一地方選。2019年は統一地方選と夏の参院選が12年に一度重なる「亥(い)年選挙」だった。