芸能界スキャンダル、政界に飛び火 文大統領が徹底調査指示 野党反発
【ソウル=鈴木壮太郎】警察と芸能界の癒着疑惑が韓国社会に波紋を広げている。人気アイドルグループのメンバーが経営するクラブでの暴行や麻薬使用を警察がもみ消していた疑惑が浮上し、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は徹底した真相究明を指示した。ただ、前政権で起きた事件も真相究明の対象にしたことに野党が反発しており、芸能界スキャンダルは政界に飛び火した。
発端はある男性の告発だった。「BIGBANG」(ビッグバン)のメンバー、V・I(本名=イ・スンヒョン)氏が役員に名を連ねるクラブで従業員から暴行を受け警察に通報したところ、逆に警察に連行され、業務妨害の容疑で立件されたという。
男性の告発で、事件は思わぬ広がりを見せた。実業家としての顔も持つイ氏は投資家に売春をあっせんした疑いで警察に聴取され、芸能界からの引退を表明した。
クラブでは麻薬の使用が常態化していた疑惑も浮上。クラブ経営者も聴取された。この経営者とゴルフや会食を繰り返していたとして、警察幹部も捜査対象となった。韓国メディアによると、この幹部はクラブが食品衛生法違反に問われると、所轄の警察署に電話し、捜査状況を問い合わせたという。
有名芸能人と警察の癒着に韓国世論は怒り、大統領府ホームページには徹底捜査を求める請願が20万件を超えた。20万件を超えると大統領府は回答する義務がある。文氏は18日、「社会の特権層で起きた事件の真実を究明できないと公正な社会とはいえない」と指摘。検察と警察に「組織の命運をかけて責任を負うべきだ」と強く指示した。
ただ、文氏が徹底調査を指示したのは今回の件だけではなかった。女優のチャン・ジャヨンさんが事務所から性的接待を強要されたとのメモを残して2009年に自殺した事件と、朴槿恵(パク・クネ)政権時の法務省次官が建設業者から性接待を受けた事件も「力のない国民が被害を受けた」として対象にした。
「野党第1党の代表たたきだ」。朴槿恵政権の与党だった保守系野党「自由韓国党」は19日、強く反発した。法務省次官の性接待事件当時の法相が同党の黄教安(ファン・ギョアン)代表だったことを現政権が強調したと受け止める。チャンさんの自殺事件では文政権を批判する保守系メディア幹部が接待を受けていたとの疑惑があり、こちらも保守のイメージダウンを狙ったとの見立てだ。