NZ乱射容疑者、欧州旅行で反移民思想に傾斜か
【シドニー=松本史、パリ=白石透冴】ニュージーランド(NZ)のクライストチャーチで15日に発生した銃乱射事件のブレントン・タラント容疑者(28)は、欧州への旅行を通じて反移民意識を募らせたようだ。モスク(イスラム教礼拝所)を襲撃した事件直前に交流サイト(SNS)に投稿した文書で同容疑者自身が明かしている。
「ありふれた28歳の白人の男。オーストラリアの労働者階級、低所得者の家に生まれた」
タラント容疑者は「大いなる交代」と題した計74ページの文書で自身をこう評した。オーストラリア東部で育ち、高校卒業後に地元のスポーツクラブで働いた。豪メディアによると11年には仕事を辞め、「(仮想通貨)ビットコインの投資で資金を得て、旅行に使うようになった」(同容疑者)。
事件の直接のきっかけとして、同容疑者は17年4~5月の欧州旅行を挙げた。旅行中、イスラム過激思想に共鳴したウズベキスタン出身の男がストックホルムで起こしたテロに憤激。さらに「フランスの町で目撃した(移民が多くいる)光景が最後の一押しとなった」と記した。移民を「侵略者」と表現し「フランスのどの町にも侵略者がいた」と反感を募らせた。
表題の「大いなる交代」はフランスの極右の作家、ルノ・カミュ氏の著書と同名。カミュ氏の著書はイスラム文化が知らない間に欧州を乗っ取ろうとしているといった陰謀論が中心だ。
各国のメディアや専門家は11年にノルウェーの連続テロで77人を殺害したアンネシュ・ブレイビク受刑者との類似点を指摘する。同受刑者も犯行前、ネットに1500ページに及ぶ文書を投稿。イスラム教徒への警戒など反移民の主張を展開した。
ロイター通信によると、タラント容疑者はセルビアやクロアチア、ハンガリー、ブルガリアなどにも渡航歴がある。
オーストラリア国立大学特別研究員のクラーク・ジョーンズ氏(犯罪学)はバルカン半島のいくつかの国で極右主義団体の活動が目立つとしたうえで「こうした地域への渡航で過激思想への傾斜に拍車がかかった可能性もある」と指摘する。