政府 辺野古移設は推進 沖縄知事 土砂投入中止要請も
米軍普天間基地(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設を巡り、安倍晋三首相は19日、首相官邸で玉城デニー沖縄県知事と会談した。玉城氏は政府が25日に計画する新たな海域への土砂投入の中止を要請した。工事を止めた上で、政府と県による1カ月間の集中協議の実施も求めた。政府は対話姿勢をみせつつ工事は計画通り進める方針だ。
首相は会談で「折をみて話し合いをしたい」と述べたが、玉城氏の要請に明確な回答はしなかった。菅義偉官房長官は記者会見で「早期に辺野古に移設する考えは変わっていない」と述べた。土砂投入も予定通り着手する見通しだ。
集中協議は翁長雄志前知事の時代や、玉城氏の知事就任直後にも開いた。首相は19日の会談で「翁長氏の時にも設けたが結果的に移設を進めることになった」と語り、集中協議を開くことに否定的な考えを伝えた。
首相は政府と県、宜野湾市からなる「普天間飛行場負担軽減推進会議」の開催については「日程調整している」と前向きな姿勢を示した。
玉城氏は首相に、2017年に翁長氏が提訴し、最高裁に上告している裁判を取り下げると伝えた。県は「県の許可なく岩礁破砕を伴う工事をしている」と訴えていた。18年12月に福岡高裁が県の控訴を棄却し、県は最高裁に上告していた。
玉城氏は会談後、取り下げの狙いについて記者団に「訴訟合戦ではなく対話の環境づくりだ」と語った。「対話による解決」を訴え、法廷での争いを回避するための措置だとも強調した。
県はこの裁判で一審、二審と敗訴しており、もともと最高裁でも勝てる見込みは少ないとみられていた。移設反対派の県議は「県が対話にむけて行動したのに政府が応じていないという構図をつくる」のが狙いだとの見方を示す。
玉城氏は県による埋め立て承認撤回を石井啓一国土交通相が執行停止したのは違法だとして提訴を検討する。22日が提訴期限だ。玉城氏は提訴について首相との会談後に「首相の対応次第だ」と述べた。政府が応じられる点は少ないとみられ、県の対応が焦点となる。
8月25日告示、9月11日投開票の日程で実施される沖縄県知事選挙に関する最新ニュースと解説をまとめました。現職と新人2人の計3人が立候補を届け出ており、米軍普天間基地(宜野湾市)の名護市辺野古移設の是非や、新型コロナウイルス感染拡大で傷ついた県経済の回復が主要争点となりそうです。