菊竹氏建築「解体進める」 宮崎・都城市、予算可決で
宮崎県都城市が老朽化を理由に取り壊しを決めた建築家・故菊竹清訓氏設計の旧都城市民会館を巡り、市議会本会議は19日、解体事業費約1億9300万円を計上した2019年度当初予算案を賛成多数で可決した。池田宜永市長は閉会後、記者会見し「解体に向けて粛々と事業を進めていく」との考えを強調した。
市によると、今後解体業者の選定手続きを進め、早ければ6月議会での議決後、工事に着手する方針という。
日本建築学会などは保存を強く訴えたが、補修や保存の経費負担を理由に市民アンケートでは8割以上が解体を支持した。民間企業から活用に向けた具体的な提案もなかったため、市は取り壊しを決め、19年度当初予算案に解体事業費を盛り込んだ。
国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関の国際記念物遺跡会議(イコモス)は先月、世界的な文化遺産の損失になり、再活用するべきだと市側に促していた。市議会総務委員会は「価値を精査する必要がある」として解体事業費を削除する予算の修正案を提出したが、本会議で19日否決された。
旧都城市民会館は1966年に完成。扇状に広がる鉄骨のはりが特徴で、時代や用途の変化に応じて建築も都市も新陳代謝するという菊竹氏らが提唱した理論「メタボリズム」の代表作とされる。07年に閉館した。
議会を傍聴した日本イコモスの理事で、東京理科大の山名善之教授(近現代建築史)は「非常に残念。文化財への理解が広がらない現状があり、行政の姿勢が改めて問われることになると思う」と話した。〔共同〕