地価上昇、二極化鮮明に 地方は都市部・観光地に集中
地価上昇が全国に広がっている。2019年の公示地価で上昇地点数が前年より1割増加し、上昇基調も強い。ただ、三大都市圏、地方圏ともに回復の動きは再開発が進む都市部やその周辺、訪日外国人客の見込める観光地などに集中。全国では3割の地点で依然として下落が続いており、投資家や消費者の選別により二極化が進んでいる。
全用途で見ると、全体に占める上昇地点の割合は46%に達した。地方圏に限っても33%だ。いまの景気回復局面が始まった段階の13年は5%にとどまっており、地価上昇が三大都市圏から地方に確実に広がっている。
19年は地方の住宅地が27年ぶりのプラスに転じた。賃上げや低金利によって住宅取得に意欲をもった消費者の間では、利便性が高い地域を求める選別の動きが強まっている。大型商業施設の周辺や子育て環境が整う文教地区、再開発によって町並みが整備されている所などが人気だ。
地方の都市部がけん引し住宅地の地価の変動率が上昇した都道府県は18年の14から18に増えた。北陸新幹線の延伸による恩恵が及ぶ石川県などがプラスに転換。1%以上の下落率を示した県は10から7に減った。
地方圏での上昇地点は再開発に取り組む余力のある都市部に加え、自治体が住民を引き寄せようと独自の施策を打ち出している地域もある。住宅地の上昇率が17年ぶりにプラスになった山形県東根市は、子育て環境の整備を進めて県内で人口増が見込まれる唯一の地域だ。那覇市は中心地の再開発やモノレールの延伸などにより住宅地が10.6%と大幅に上昇した。
観光地がけん引役となっている構図も続く。訪日客数は18年に初めて3千万人を超えた。上昇率上位は北海道や沖縄など常連と言える地域。商業地の1位はニセコ観光圏にある北海道倶知安町の地点。近年はオーストラリアからのスキー客が訪れており、コンドミニアムなどの建設が続く。2位は大阪を訪れる外国人客の有名スポット黒門市場を抱える地点だった。
一方、人口減や高齢化が進み、利便性も示せないような地域は下落を続けている。地方圏では全用途、住宅地、商業地ともに下落地点がなお5割程度ある。下落率上位は昨年の西日本豪雨で被害を受けた地域が多いが、商業地の2位は過疎化が続く北海道夕張市の地点だ。県全体の住宅地がプラス転換した石川県でも、北部にある珠洲市の地点は5.1%の下落。慢性的な人口減や空き家の増加が理由で下落率も拡大した。地方の都市部は上昇基調が強まっており、二極化が進んでいる。
三大都市圏も利便性などに応じて格差が広がっている。住宅地では千葉県野田市の地点で駅からの距離が敬遠されたことや住宅の供給過剰で7.8%減と全国で8番目の大きな下げ幅となった。神奈川県三浦市の地点でも人口減少などが影響して8.4%下げた。
商業地でも状況は同じだ。奈良県は訪日客の増加で奈良市が5.1%も上昇したが、近隣の天理や宇陀などは下落が続いている。東京圏でも茨城県の南部や埼玉県の北部など都心から遠い地域では下落が目立つ。