ブラジル大統領が訪米、米国との軍事協力拡大へ
【サンパウロ=外山尚之】ブラジルのボルソナロ大統領は17日から訪米し、19日にトランプ米大統領と会談する。1月に就任したボルソナロ氏は親米路線を推進しており、米国との軍事や通商面での協力拡大を進める。ブラジルの北大西洋条約機構(NATO)協力国入りや混乱が続くベネズエラ情勢を協議するほか、2国間の貿易拡大に向けた取り組みも進める。
ボルソナロ氏は17日夕方(日本時間早朝)にワシントンに到着し、ツイッターに「久々に反米ではないブラジルの大統領がワシントンに到着した。ブラジルがずっと望んでいた、自由と繁栄のパートナーシップの始まりだ」と投稿した。公式日程によると、18日に全米商工会議所のイベントに参加した後、19日にホワイトハウスでトランプ氏と会談する。
ブラジルでは2003年に誕生し16年まで続いた左派政権が米国と一定の距離を置き、ベネズエラなど南米の左派国との連携を深めていた。ボルソナロ氏は歴代の左派政権の外交戦略を「誤りだった」と断言し、米国と密接な関係を築く方針を表明している。
ブラジルメディアによると、今回の首脳会談ではブラジルのNATO協力国入りに向けた議論を開始するほか、独裁政権が続く南米ベネズエラのマドゥロ政権に対する圧力強化について話し合うという。また、ボルソナロ氏はブラジル軍が管理する、アルカンタラ射場を米国企業に開放することも提案するとしている。同射場は赤道に近く、燃料を節約できるため、米国の宇宙産業にとって後押しとなる。
貿易戦争などで国際社会から孤立しつつあるトランプ政権だが、南米ではブラジルをはじめ、コロンビアやアルゼンチンでも親米政権が誕生しており、足元ではベネズエラ情勢を機に距離感を縮めている。
ベネズエラ情勢についてはどの国もトランプ氏が示唆する軍事介入には反対するものの、マドゥロ政権の早期打倒が必要だとの認識で一致。15日には米州開発銀行(IDB)が野党系の候補者をベネズエラ代表として承認したが、ブラジルやアルゼンチンが米国に協力している。
もっとも、過激な発言や交流サイト(SNS)での投稿で「ブラジルのトランプ」とも呼ばれるボルソナロ氏が「本家」トランプ氏に接近することで、言動や政策がさらに過激化することへの懸念はブラジル国内では根強い。ボルソナロ氏は過去にトランプ氏をまね、国連からの脱退やパリ協定からの離脱を示唆したこともある。
公式日程に名前は記載されていないが、ブラジルメディアはボルソナロ氏が17日夜、トランプ氏の元側近で元首席戦略官・上級顧問のスティーブン・バノン氏と会食する可能性が高いと報じている。
ボルソナロ氏は息子を通じ、18年の大統領選の期間中からバノン氏と連絡を取っていた。既存の国際社会の秩序を否定するバノン氏の主張が中南米最大の国であるブラジルの政策に影響を与えれば、中長期的に地域の不安定要素にもなりかねない。