名古屋・大須に銀幕復活 30年ぶり、有志ら準備進む
名古屋の繁華街・大須商店街に30年ぶりに映画館がオープンする。一帯は昭和初期、多くの劇場が軒を連ね、立ち見客が出るほどにぎわったが、1989年以降、常設の映画館はなかった。地元有志らが「映画の街"大須"を復活させたい」と3月末のこけら落としに向けた準備が進む。
喫茶店を改装した「大須シネマ」は広さ約100平方メートルで、縦約2メートル、横約3.5メートルのスクリーンと42席。午前は西部劇や昭和の名作邦画を、日中は若者向けのアニメ、夜は仕事帰りに気軽に見られる短編映画と幅広く上映する予定だ。
元衣料雑貨店経営の中川健次郎さん(78)ら地元の有志らが約3年前から、商店街にある公設市場の空きスペースで定期的に上映会を催しながら計画。昨年にNPO法人を立ち上げ、2千万円の開業資金は寄付や約250人の賛助会員費で賄った。
大須で生まれ育った中川さん。「映画は自分にとって学校で、歴史や世の中のことを教わった」。時代劇や外国映画に憧れ、学生時代は朝から晩まで劇場に入り浸っていたという。
新聞記事をまとめた記録本「大須レトロ」などによると、東京、大阪に次ぐ国内3番目の常設館が1908(明治41)年に登場した。昭和初期のピーク時には23館が営業。空襲で焼失した多くが戦後再建したものの、テレビの普及や娯楽の多様化で経営は先細りとなり、最後の1館も30年前に閉鎖していた。
オープン初日の1作目は活弁士を呼び、無声映画で活躍した米国の喜劇俳優ハロルド・ロイドの「ロイドの要心無用」を予定。4月は石原裕次郎主演の「嵐を呼ぶ男」を上映する。支配人に就任する中川さんは「皆さんに見てもらいたい映画がたくさんある」と夢を膨らませている。
〔共同〕