アサド政権、優位固める 内戦開始から8年
【イスタンブール=佐野彰洋】シリア内戦の当初は劣勢だったアサド大統領の政権軍はロシアやイランの支援で盛り返し、最後の主要な反体制派の拠点とされる北西部イドリブ県を攻める。アサド政権は内戦後の国家再建を視野に入れる。
在英のシリア人権監視団によると、政権軍やロシア軍は12日から13日にかけ、イドリブ県に激しい空爆や砲撃を実施した。主な攻撃対象は国際テロ組織アルカイダ系の過激派組織だ。
一時はシリア東部を中心に広大な地域を支配した過激派組織「イスラム国」(IS)はイラクとの国境に近い東部バグズに追い込まれた。クルド人勢力が掃討作戦を続ける。クルド人勢力は大きく分ければ反体制派の一部とみなされ、米軍の支援を受けてきたが、最近は政権軍に近づく。
優位を固めたアサド氏は、内戦後の国家再建の準備を始めた。2月下旬にはイランの首都テヘランを訪問し最高指導者ハメネイ師やロウハニ大統領と会談し、支援継続の確約を得た。両国の支配層は大きなくくりでのイスラム教シーア派だ。
当面の焦点は人口約1800万人のシリアで多数派のイスラム教スンニ派の扱いだ。政権は再建過程で権利を大きく制限する可能性がある。2018年制定の財産法は個人の土地や建物を一定の条件下で当局が接収できると定めた。国外に逃れたスンニ派住民が残した不動産が狙われそうだ。
シリア人権監視団によると、内戦の死者は18年12月時点で約37万人。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると568万人が国外で難民となり、620万人が国内で避難している。