関西アクセス便利に 新名神の新区間17日開業
新名神高速道路の三重県区間が17日に全線開通する。静岡県御殿場市と滋賀県草津市の東西約330キロメートルのジャンクション(JCT)間に、東名と新東名、名神と新名神の各高速道路でダブルネットワークが完成。産業の活性化で年間約1550億円の経済効果が見込まれるという。
17日に開通するのは新四日市JCT(四日市市)―亀山西JCT(亀山市)の約23キロメートル区間。菰野インターチェンジ(IC、菰野町)と鈴鹿パーキングエリア(PA、鈴鹿市)が新設された。
鈴鹿PAの商業施設「ピットスズカ」が14日地元住民らに公開され開通ムードを盛り上げた。
PA近くでは17.7ヘクタールの工業団地が計画されている。自動料金収受システム(ETC)専用のスマートICを併設するPAの機能を最大限に生かすのが狙い。
今夏にも地権者らが事業主体の組合を設立。大手住宅建設会社などと連携し、物流施設や食品工場の誘致事業が動き出す。鈴鹿市には自動車関連を中心に製造業の工場が集積。「足腰の強いものづくりの町」を掲げる市も計画を後押しする。菰野IC周辺でも工業団地化の機運が高まる。
食品加工メーカー、寿がきや食品(愛知県豊明市)と、産業ガス大手のエア・ウォーターは昨秋、亀山市の工業団地に新工場を建設することを発表。寿がきや食品の菅木伸一社長は「新工場は関西への供給強化の役割も担う」と説明した。
新名神の開通を見据え、この工業団地の区画造成や誘致を県も積極的に支援してきた。関係者によると、複数の企業が進出に前向きという。
大きな要因は平行する東名阪自動車道の渋滞緩和。中日本高速道路の試算では、新名神の開通で交通量が分散され、渋滞発生回数(2017年は約1300回)が約9割削減の見込み。
物流の時間短縮はコスト低減や競争力の強化につながる。三菱UFJリサーチ&コンサルティングは「経済効果は年間約1550億円」との試算をまとめた。
地域別にみると、「関西(京都、大阪、兵庫)」が約684億円で、「沿線(愛知、三重、滋賀)」が約437億円。関西の3府県では食品、沿線3県では輸送機械や化学を中心に企業間の取引が増え、年間の生産額を押し上げると分析する。
百五総合研究所(津市)は「三重県内の観光消費がもたらす経済効果は年間約480億円」とする調査結果を公表。東名阪の慢性的な渋滞解消により、ナガシマリゾートを運営する長島観光開発(桑名市)は「神戸以西の岡山などからの集客にも期待」と話す。
大型クルーズ船の寄港誘致に力をいれる県観光魅力創造課は「上陸した外国人客の観光ツアーの範囲を拡大できる」と、関係市町と協議する。
愛知、岐阜県を環状に結ぶ東海環状自動車道も17日、三重県の東員町といなべ市とのIC区間が開通する。四日市港や名古屋港へのアクセス向上は中部のものづくりや観光を新たなステップに引き上げる。
■名古屋―伊勢方面、当面は乗り入れできず
新名神の亀山西JCTでの伊勢方面との連結工事は終わっていない。当面、名古屋―伊勢間の相互乗り入れができず、中日本高速道路は注意を呼びかけている。
名古屋方面から新名神に入ると、亀山西JCTから伊勢方面には進めない。逆に、伊勢方面から北上して亀山JCTで新名神に入った場合、亀山西JCTから大阪方面(下り線)に進めても名古屋方面(上り線)には行けない。
名古屋―伊勢間の連結工事が6年遅れで始まったためで「工事の完成は2019年度中」という。
(津支局長 山本啓一)
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