中国、組み立てから高度部品生産に 内閣府が報告書
内閣府は12日、世界経済の動向を調べる報告書「世界経済の潮流」で、米中の貿易摩擦が両国や世界経済に与える影響を分析した。中国は生産機械のような付加価値の高い製品や部品の輸出拠点になっていると指摘。米中貿易摩擦によって中国からの輸出が減れば、世界各国に広く影響を及ぼしかねないとの見方を示した。
国連のデータなどを使って中国の貿易産業の構造変化をまとめた。これまで中国は付加価値の高い部品を輸入して国内で消費財にして輸出する「世界の組み立て工場」の役割を担ってきた。その過程で、高品質な部品などの中間財や、生産機械などの資本財を製造する技術を取得し、徐々に内製化を進めてきた。
中国の輸出に占める中間財の割合は2016年に41.1%、資本財も31.2%となり、それぞれ00年に比べて10ポイント以上伸びた。一方で消費財の占める割合は16年に27.0%と、00年に比べて21ポイント超下げた。
かつての繊維製品や玩具といった品目や組み立てを中心にしたものから、電気製品や高品質な部品、生産機械といった付加価値の高い製品の生産・輸出へとシフトしていることがうかがわれる。
輸出のうち自国で生み出した付加価値の割合をみてみると、中国は18年は87.1%で、米国の86.7%を上回った。日本は79.4%だった。
電気機器などの分野で、中国で生産・輸出される付加価値の高い部品は米国の製造業に欠かせなくなってきている。米国が輸出する製品に含まれる海外で生産された部品などの付加価値は18年は約13%だった。その内訳を国・地域別シェアでみると中国が12%と00年の4.9%から割合を大きく高めている。日本の場合は00年の13.6%から5.6%へとシェアが低下している。
中国は米国の最大の輸入相手国となっており、輸入に占める割合も17年は21.6%と、1980年以降で最高になった。日米貿易摩擦が問題になっていた86年当時の米国の輸入に占める日本の割合(22.4%)に迫る勢いだ。内閣府は米中貿易摩擦の背景には「中国経済のプレゼンスの高まりがある」と中国が米国の脅威になりつつあることを指摘した。
内閣府は米国が中国に追加関税を課し、中国から米国への付加価値の高い部品などの輸出が減ると「米国の自動車や半導体等の輸出にも影響が及ぶ」と分析した。さらに米中間の貿易摩擦は先進国の貿易のほか「アジア新興国等の貿易にも広く影響する可能性がある」とも指摘した。
貿易摩擦が世界の実質国内総生産(GDP)に与える影響として、国際通貨基金(IMF)の試算では、世界のGDP成長率は19年に0.78%、20年に0.82%下押しされるとした。
19年に米国が自動車や自動車部品の輸入に25%の追加関税をかけ、各国の設備投資が下押しされる、といったシナリオを前提として考慮している。国別でみると中国への影響が大きく、GDP成長率は19年に1.63%、20年は1.41%下押しされる。米国も19年に0.91%、20年に0.95%下押しされるという。