日本人建築家、世界で高評価の理由は「徒弟制」にあり
建築界のノーベル賞と称される米プリツカー賞の2019年の受賞者に磯崎新氏が選ばれた。日本人の受賞は丹下健三氏、安藤忠雄氏らに続いて8人目。本国の米国と並び受賞者数は最多になった。
日本の建築家が高く評価される理由の一つとして「日本の建築界の特徴である建築事務所や大学研究室での徒弟システムが効果を発揮してきた」と東北大学の五十嵐太郎教授は指摘する。磯崎氏は東京大学の丹下研究室に在籍し、卒業後も師のもとで大阪万博のプロジェクトに携わった。丹下研究室は1993年に同賞を受賞した槇文彦氏のほか、黒川紀章氏らの才能を輩出したことで知られる。丹下氏の受賞時には教育面での貢献も特筆されたという。
2013年に受賞した伊東豊雄氏の事務所出身のSANAAの妹島和世氏も、師匠より一足早く10年に受賞。14年受賞の坂茂氏は磯崎氏の事務所で働いた。人材育成の制度は若手に実践の場も提供してきた。一方、日本人の受賞が今後も続くかは「心もとない」と五十嵐教授。若手に設計のチャンスが回らず、東京五輪の新国立競技場でイラク出身のザハ・ハディド氏の斬新なアイデアが実現しなかったように「保守的な雰囲気が強まり、実験的な建築を試す機会が減っている」と憂慮する。
(窪田直子)