東証1部上場基準、世界比較でも「甘め」
廃止基準の見直しも課題に
東京証券取引所による市場区分の見直しを巡る議論は大詰めを迎えている。1部の品質向上については上場に必要な時価総額を500億円に引き上げる案や、優良な主力企業を選別してさらに上位の「プレミアム市場」を創設する案がある。2部やマザーズなどその他の市場は現行の3市場から2市場に集約するなどして、成長企業向けと中堅企業向けとに位置づけを明確にする方向だ。
1部上場の基準は海外と比較しても甘めだ。例えば米国では時価総額が絶対の条件ではないものの、ニューヨーク証券取引所(NYSE)は2億ドル(約220億円)を基準とする。2部・マザーズを経由した場合よりも、5倍ほど高いハードルを設けている。
上場廃止基準も見直しの対象だ。東証1・2部は時価総額10億円未満が条件。NYSEは1500万ドル、米ナスダックの上位市場、グローバルセレクトは5000万ドルをひとつの基準とする。どちらも日本より厳しい内容だ。上場廃止になった銘柄を円滑に取引する仕組みの整備も必要だとの声もある。
日本では欧米市場よりも再編型のM&A(合併・買収)などによる上場廃止が少なく、企業の新陳代謝は鈍い。また、1部銘柄は日銀の年間6兆円にのぼる上場投資信託(ETF)買いの対象となる。株価は下支えされるため、1部上場後に経営の規律が緩みやすくなるとの指摘もある。
東証が進める市場再編の議論を巡っては、「より厳しい上場基準を設けた市場を作ることで、企業の成長の動機づけをすべきだ」(野村総合研究所の大崎貞和氏)といった声があがっている。