ファーウェイ孟氏「逮捕は政治的な動機」、カナダで出廷
【ニューヨーク=高橋そら】米国がカナダに対して身柄引き渡しを求めている中国の通信機器最大手、華為技術(ファーウェイ)の孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)が6日、バンクーバーの裁判所に出廷した。孟氏側の弁護人は逮捕の背後には「政治的な特徴や動機」があると主張し、逮捕は不当だと訴えた。引き渡し審理のための同氏の次回の出廷は5月8日となる。カナダメディアが報じた。
孟氏は紫色のパーカーに帽子姿で裁判所に姿をみせた。法廷では同氏の弁護団とカナダ司法当局が引き渡し審理の手続きなどを確認した。開廷時間は17分ほどだった。
孟氏側の弁護人リチャード・ペック氏は、米の引き渡し要求には政治的な動機があり「深刻な懸念を抱いている」と主張した。トランプ米大統領が2018年12月に「(中国との)貿易で過去最大の取引をすることや、安全保障にプラスになるのであれば必ず介入するだろう」と発言したことを根拠に挙げた。警察当局や国境警備当局に対し情報の開示も求めた。
弁護団は18年12月に空港で孟氏を拘束した際のカナダ当局の対応は適切ではなく、憲法上の権利の重大な侵害にあたるとの見解を示している。審理では証拠を得るためのカナダ当局側による手続きの乱用を主張する可能性が高い。
孟氏の弁護団はすでにカナダ政府などを相手取り、逮捕前に不当な尋問を受けたなどとして損害賠償を求める訴えを起こした。弁護団によると、同氏は逮捕前に一般的な入国審査を装って3時間にわたり拘束され、尋問を受けた。持っていたスマートフォンやパソコンを取り上げられ、パスワードの提示を求められたという。
現地メディアによると孟氏によるカナダ政府への提訴は引き渡し審理とは別々に進行する。ただ同氏の拘束時の対応が適切でなかったと認められた場合、審理が中止されたり、米国側が提出した証拠の一部が使えなくなったりする可能性があるとされる。審理は長期化するとの見方が強い。
カナダ当局は米国の要請によりバンクーバーで孟氏を逮捕した。米国はその後、イランとの違法な金融取引に関わった罪などで孟氏を起訴し、カナダに身柄の送還要請を正式送付した。カナダ司法省は今月1日に同氏の身柄を米国に引き渡すかの是非を判断する審理の開始を許可した。