ミサイル拠点、北朝鮮が再建の動き 米シンクタンク
【ワシントン=永沢毅、ソウル=恩地洋介】米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)と北朝鮮分析サイト「38ノース」は5日、北朝鮮が北西部の東倉里(トンチャンリ)のミサイル発射場の復旧を急速に進めているとの分析をそれぞれ発表した。これとは別に核関連の動きが続いているとの指摘もある。2月末の米朝首脳会談が物別れに終わり、北朝鮮の非核化は一段と不透明さが増している。
分析のもとになった人工衛星写真は今月2日に撮影された。それによると、建物の近くに2基のクレーンが立ち、屋根が新たに取り付けられたり壁が再建されたりしているという。
韓国情報機関の国家情報院も5日、東倉里のミサイル発射場から撤去された施設の一部を復旧する動きが2月から確認されていると国会に報告。国情院は「(米国の)参観団の訪問に備えて修理したと推定されるが、再びミサイル施設として復旧させた可能性もある」と指摘した。韓国メディアが報じた。
6日の米政府系放送局「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」は衛星写真を分析した結果、2月22日に建設資材が動かされるなどの動きが確認されたと伝えた。VOAによると、施設は2018年7月に屋根と外壁を解体する様子が観測されたが作業は同8月に中断されたままとなっている。
東倉里は米国本土を射程に入れる大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発に重要な役割を果たしたとされる。北朝鮮は18年9月の南北首脳会談に際し、東倉里にあるミサイルエンジン試験場と発射台を関係国の専門家の立ち会いのもとで永久廃棄すると表明していた。
一連の分析は北朝鮮のミサイル開発の継続を疑わせる。国際原子力機関(IAEA)は4日の定例理事会で、2月末時点で核開発の主力拠点である寧辺(ニョンビョン)の核施設で軽水炉建設の動きが継続しているほか、ウラン濃縮施設を使っている兆候があったと指摘していた。
米国は今後も非核化交渉の継続に意欲を示す。米国のビーガン北朝鮮担当特別代表は6日、日本外務省の金杉憲治アジア大洋州局長、韓国外務省の李度勲(イ・ドフン)朝鮮半島平和交渉本部長とワシントンで会い、交渉の仕切り直しに向けた対応策を練る。IAEAの天野之弥事務局長も米朝合意があれば査察に臨む構えを示している。
ただ北朝鮮が先の米朝首脳会談で廃棄する用意があると表明したのは寧辺の核施設だけで、他の秘密施設や核弾頭も含めた全面廃棄を求める米国との溝は深い。ボルトン米大統領補佐官(国家安全保障担当)は5日のFOXビジネス・テレビのインタビューでこう主張した。「北朝鮮がもし核計画やそれに関連する全てを廃棄するつもりがないのなら、制裁緩和は得られない。むしろ強化を考える」
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