東海第2再稼働、焦点は地元自治体の合意 安全確保へ課題山積
日本原子力発電(原電)が22日、東海第2原子力発電所(茨城県東海村)を再稼働させる意向を表明した。再稼働を巡っては今後、事前同意や「実質的な事前了解」の権限を持つ地元自治体の動きがカギを握る。実効性のある広域避難計画を策定できるか、住民の意見をくみ取れるか。県内や周辺地域の住民の安全を最優先に、原電と建設的な議論が進められるかも焦点となる。
原電の村松衛社長は同日、茨城県、東海村、水戸市を訪問。安全性向上対策に一定のメドが立ったとして「再稼働を目指してまいりたい」と述べた。大井川和彦知事は「県独自の安全性検証を終えていない」と不快感を示した。山田修村長は「住民の疑問や不安にどう答えていくのか、改めて考えてもらいたい」と要望。高橋靖市長も「住民との信頼関係を保ちながらやりとりを」とくぎを刺した。
原電が再稼働に際し「実質的な事前了解」を得る6市村のうち、東海・水戸を除く4市は同日の面会に応じなかった。ひたちなか市の大谷明市長は「6市村で詳細な説明を受けるべきだ」と強調。日立市の小川春樹市長は「これまでのやりとりで明確な対応をいただいていないものがある」と原電に丁寧な対応を求めた。
原電が6市村から「実質的な事前了解」を得る際、必要に応じて6市村と原電は事前協議を重ねることとなる。ただ、現状では両者の「信頼関係は崩れている」(東海村の山田村長)。原電は「納得いただけるまでとことん協議する」(村松社長)と話すが、議論が難航する可能性もある。
6市村内では18年11月にひたちなか市長が本間源基氏から大谷氏に交代。19年2月には再稼働反対を表明していた那珂市の海野徹前市長が退任。着任した先崎光氏は「市民・市議会の意見などを十分考慮しながら慎重に判断する」と白紙に戻す考えだ。4月には水戸、日立両市で市長選が予定されている。
再稼働には6市村以外の自治体も影響を与える。半径30キロメートル圏内の14市町村に義務付けられた広域避難計画は11市町村で未策定。移動手段の確保や要配慮者の安全確保など課題が残ったままだ。策定を終えた常陸太田市も「実効性を検証しながら対応したい」(大久保太一市長)としている。
6市村を除く8市町と小美玉市は15日、同原発の再稼働の是非などについて原電に意見できる権限を得た。水戸など6市村の持つ「実質的な事前了解」とは異なるが、住民の声を事業者側に伝える上では一定の役割を果たすものとみられる。
6市村内でもいかに住民の意見に耳を傾け、首長判断に反映させるかは重要な課題だ。住民投票やアンケート、有識者会議の開催――。原発を巡っては「単純な賛成、反対ではなくいろんな問題が絡み合っている」(東海村の山田村長)だけに、適当な手段を決めにくいのが実情だという。
多くの自治体首長が「時期ありきではない」と口をそろえる。自治体、事業者ともに、時間をかけてでも同原発を巡る最新の状況や、避難計画の策定状況などをきめ細かく発信する必要がある。今後はいかに地域住民を巻き込みつつ、最終的な是非判断に向けた課題を地道に克服できるかがポイントとなりそうだ。
関連企業・業界