日通、4月に同一労働同一賃金導入
日本通運は22日、同じ条件で働く正社員と非正規社員の待遇格差をなくす「同一労働同一賃金」を2019年4月に導入すると発表した。各地の支店で働く非正規社員6000人の賃金を正規社員の水準まで引き上げる。福利厚生の適用拡大などを含め、19年度は総額100億円のコスト増を見込んでいる。4月施行の働き方改革関連法などをにらみ、待遇格差の是正の動きが広がりそうだ。
同日発表した中期経営計画に盛り込んだ。日通の社員は約4万人で、支店ごとの採用で転勤のない正規社員(一般職)は約1万6000人いる。非正規で人手不足が深刻なトラックやフォークリフトの運転手、事務職など約6000人が今回の待遇格差是正の対象になる。
給与の引き上げのほか、待遇面も正社員と同水準に引き上げる方向で検討している。結婚のほか、家族や親族が亡くなった際の休暇も同様に利用できるようにする。出産前後の産休も含まれる見通しだ。日通の担当者は「社員の関心は高い。給与だけでなく待遇面の格差もなるべくなくしていければ」と話す。
働き方改革関連法で20年4月から適用される同一労働同一賃金を1年前倒して導入する。竹津久雄副社長は22日の中期経営計画説明会で「先んじて対応することで、人材確保や社員の働く意欲の向上につながると期待している」と述べた。
正社員と非正規社員の待遇差を是正する動きは大企業を中心に広がっている。ブリヂストンは18年10月から国内工場の約1300人の契約社員に正社員と同水準の夜勤手当の支給を始めた。
19年春季労使交渉でも大きなテーマの一つだ。非正規を多く抱える流通や外食、繊維などの労働組合が加盟するUAゼンセンは、パートのベースアップ(ベア)で正社員と同程度の2%を要求。一時金の制度化も求める。JR西日本の労組は契約社員の時給を40円引き上げて1000円に、NTT労組は非正規の年収の2%引き上げを要求する。日本郵政グループ労働組合(JP労組)は非正規への扶養手当支給を求めた。
正社員と非正規の不合理な待遇差をなくす同一労働同一賃金を導入するには既存の賃金体系の見直しが必要だ。業務の内容と評価基準も明確にしないと、公平性が保てなくなる。待遇改善で非正規の働く意欲向上などにつながるが、企業にとっては総人件費が増えるという課題もある。