「高齢者もたんぱく質を」 厚労省案、虚弱予防で
厚生労働省は22日、65歳以上の高齢者が1日に摂取するたんぱく質の目標量を引き上げる食品摂取基準に関する報告書案を示した。たんぱく質が不足すると、高齢者は筋肉が衰えるなど「フレイル」(虚弱)という状態に陥りやすく、運動・認知機能が低下する。このため同省は高齢者が必要なたんぱく質を摂取するよう目標量の下限を引き上げる考えだ。
健康増進法に基づく日本人の食品摂取基準は5年に1度改定する。今回の基準は2020年版で20年4月からの目標となる。同省は22日に開かれた基準策定検討会に報告書案を提示。3月中にとりまとめ、年内に告示する方針。
報告書案によると、フレイルを予防するためのたんぱく質の目標量は1日に必要な総エネルギー量に対する割合で上限と下限を示している。
20年版の摂取基準では、65歳以上は総エネルギー量の「15~20%」を目標としている。前回の15年版の摂取基準ではすべての年代で「13~20%」としていた。
今回は50歳以上について「50~69歳」「70歳以上」の2区分から、「50~64歳」「65~74歳」「75歳以上」と3区分に増やした。そのうえで65歳以上の下限を2ポイント上げ「15%」にし、中年世代も「14%」と1ポイント引き上げ、中高年のたんぱく質の摂取不足を防ぐ。
総エネルギー量は身長や体重、活動量などで異なるため、活動量が少ない人は総エネルギー量に対する割合ではたんぱく質の絶対量が不足する恐れもある。同省は推奨量として65歳以上では男性で「1日当たり60グラム」、女性で「同50グラム」を掲げ、加齢によって活動量が少なくなっている人についても推奨量以上を摂取するよう求める。
一方、たんぱく質の取り過ぎは腎臓の状態を悪化させたり、糖尿病のリスクを高めたりする可能性があり、総エネルギー量に対して20%の上限は全年代で変更しない。
このほか報告書案では食塩の摂取基準についても変更した。高血圧や腎臓病を予防するための目標量について、15歳以上の男性では1日当たり7.5グラム未満、女性では6.5グラム未満に設定。男女とも15年版の摂取基準に比べて0.5グラム引き下げた。高血圧と腎臓病の重症化を防ぐための食塩の目標量として、新たに男女とも「1日6グラム未満」とする目標も設定した。
「体重1キログラムで1グラム以上」
厚生労働省が22日に提示した食品摂取基準に関する報告書案は「フレイル」(虚弱)の発症予防を目的とした場合、65歳以上の高齢者は体重1キログラム当たり少なくとも1グラム以上のたんぱく質の摂取が望ましいとした。体重50キログラムの人ならば1日50グラム以上となる。総エネルギー量は活動量によっても異なるが、一つの目安になりそうだ。
100グラム当たりに含まれるたんぱく質は、例えば豚バラ肉で約14グラム、アジの開きだと20グラム前後。食が細る高齢者が十分なたんぱく質を取っていない可能性が高く、今回の報告書案はほかの栄養源とともに朝昼晩の食事でたんぱく質をしっかり取ることを推奨する形になる。
たんぱく質でも動物性は糖尿病の発症リスクにもなるが、大豆など植物性たんぱく質は関連がないか予防に役立つという研究結果もあるという。ただ報告書案では「特定のたんぱく質を勧める十分な根拠は得られていない」としている。