オリックス、主将に2年目福田 チーム刷新の象徴
プロ野球の「主将」に、どのような存在意義があるのか。アマなら率先垂範、チームの結束を固める上で欠かせない。だが、プロではチーム事情によって必要とせず、空席のところもある。
オリックスが今季、4年ぶりに主将を置いた。巨人・坂本勇人、DeNA・筒香嘉智のような実力者がプレーでチームを引っ張るのが、普遍的な主将の姿。ところが、新監督西村徳文が指名したのは入団2年目、26歳の福田周平だった。
福田は2018年にNTT東日本からドラフト3位で入団した右投げ左打ちの内野手。身長169センチと小柄で長打力を欠くが、俊足、好守には定評があった。17年の都市対抗で首位打者になり、最優秀選手にあたる橋戸賞を受賞した。
広島・広陵高と、明大時代に選ばれた大学日本代表で主将を務めた経験があり、"キャプテンシー"に関しても問題ない。だが、なんといってもまだ入団2年目。新人時代に後半戦での活躍で二塁の定位置についたが、安定した力がついたとはいえない。
それでも西村監督は就任間もない昨年、高知での秋季練習で早々と福田に主将内定を伝えた。福良淳一前監督のもとでヘッドコーチを務め、福田の資質を見極めていた。チームに問題点は多いが、とりわけ大きなポイントは1、2番打者と二遊間の固定、それに足を使った攻撃の敢行だった。その問題点のどれにも福田が絡んでおり、この新主将こそチーム躍進のキーマンであると決め、少し重い責任を負わせたのだ。
18年のオリックス打線では、1番に12選手、2番に11選手が入れ替わり立ち代わり登場した。故障者が多かったこともあるが、この状態では吉田正尚ら中軸打線のパワーも生かされない。福田は113試合に出場。打率2割6分4厘、16盗塁とまずまずの成績を残した。
1、2番でよく起用された。ただ、1番だとパンチ不足で、相手に弾頭の脅威を与えられない。2番でも右へ引っ張る当たりが少なく、こぢんまりした攻撃にとどまった。積極攻撃を目指す西村野球を実現するためには、快足の福田が引っ張る打力を備えることが欠かせない。
オリックスは1996年に日本一になって以来、22年間も優勝から遠ざかっている。そのチームから金子弌大(現日本ハム)、西勇輝(現阪神)の両主力投手が抜け、ベテラン野手の中島宏之(現巨人)、小谷野栄一(引退)も去った。若い主将は、チーム刷新の意気込みを示す象徴でもあるのだ。
(スポーツライター 浜田 昭八)