プチ・タイムトリップ 木ノ下裕一
昼下がりの電車の中で、ふと向かいの座席に目を向けると、乗客全員がスマートフォンを熱心にいじっていた。最近、電車の中で本を読む人、もしくは車窓から景色を眺めている人がめっきり減ったとは思っていたが、10人ばかりの老若男女が横一列に、申し合わせたかのように掌(てのひら)から少しはみ出る程度の長方形の板状のものを食い入るように睨(にら)んでいる様にいざ出くわしてみると、なんだか気味が悪かった。現代では...
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