寒風吹っ飛ぶ! テントサウナ愛(日経MJ)
静かな湖畔、朝日が昇る中、サウナを楽しむ北欧の人たち――。熱いサウナ愛をもつ全国の「サウナー」諸君! みんなの憧れ、本場フィンランドのサウナがここ日本でも楽しめるようになったぞ。持ち運び可能なテントサウナが日本に上陸し、ついにお外でサウナができるように。真冬だろうと関係ない! あっつあつのサウナ愛、持ち出そうぜ!
持ちだし自在 どこでも100℃超
氷点下4度。1月のある朝。相模原市の青野原野呂ロッジキャンプ場はこの日、特に冷え込んでいた。川のそばに立てられたテントの煙突からは白煙が出ている。
「温まってきたよー」
汗をぬぐいながら中から出てきた男性の声を合図に、男女4人がコートを脱ぎ水着に。そしてテントに入っていった。
このテントこそサウナーたちの夢、テントサウナだ。まきストーブが設置できるようになっており、換気口や煙突用の穴が開いているが、熱は逃げにくい構造。100~120度の本格的サウナをいつでもどこにでも出現させる魔法の装置だ。
「憧れですよね。湖や川のほとりでサウナに入りたかった」。こう語るのは団体職員でこのテントサウナの持ち主、大西洋さん(33)。
野外サウナを夢見て、国内では情報さえ出回っていなかったテントサウナを見つけ出した。ほどなくフィンランドから直輸入し、今は月に2回、サウナキャンプに繰り出す。最近、デザインはダサいが温まりやすいというロシア製を購入し、さらにヒートアップ中だ。
取材したこの日も友人を巻き込み7人でキャンプ場を訪れていた。記者(29)も水着で野外サウナを体験することに。かわいいサウナハットを借り、いざテントへ。外の寒さが嘘のように暑い。目の前にサウナストーンを積んだストーブ。足元はややぬるめだが、上半身は瞬く間に汗だくだ。
いい感じにあったまってくると、一緒に入っていた稲田憲悟さん(33)が「じゃあロウリュしますね」。バケツから水をくみストーンに一かけ。
ジュ~。あつあつの蒸気がテントに充満する。
「くぅ~きたきた!」
清流が水風呂
記者も熱気を全身で受け止める。15分ほどですっかり体が「完成」したころ、皆が目配せする。「じゃあ行きますよ」と外に飛び出し真冬の川へ一直線。そのまま飛び込んだ。記者もザブーン。 「ふぉ~~~! つめて~~~」
すぐ皮膚が痛み始め、キャーキャー言いながら川から上がる。タオルで体をふき、たき火の近くの椅子にどーんと座る。皆、目を閉じている。ぱちぱちと火がはじけ、川のせせらぎが響く。ハイテンションから一転、静寂があたりを包む。
「この静寂がサウナなんです」。会社員の兼康希望さん(32)は静かに語り、また自然の中に身を委ねた。記者も心地よい時間をかみしめる。水着はぬれたままだが、体の芯からぽかぽか。き、きもちいい……。
「瞬間的に高まるでしょ」と気持ちよさげな稲田さん。「最初はサウナに抵抗あったけど、一皮むけそうな感覚。めっちゃ好き」と赤井聡美さん(30)もほくほく顔だ。
自然のど真ん中
「自然と一体となる感覚が気持ちいいんですよね」としみじみ語る大西さん。実は「サウナキャンプ」という団体まで立ち上げ、Webで熱心に"布教"。山梨県小菅村で昨年秋に開いたイベントには、8張りのテントサウナ目当てに2日間で120人が集まった。
直輸入なら十数万円から。昨年から認知度が向上。国内代理店も20万~30万円で販売し、オーナーは着実に増加中だ。
購入せずとも気軽に体験できる施設も。
神奈川県平塚市にある湘南ひらつか太古の湯グリーンサウナは昨夏テントサウナを導入。土日限定(女湯は不定期で月2回)で露天風呂エリアに設営され、誰でも入湯料だけで体験できる。
「まき代はかかるし担当者を置かなきゃいけないし、そりゃあ手間ですよ」と運営会社の加川淳社長。「でもサウナの原点を伝えたいじゃないですか。まあ道楽です」
サウナー皆兄弟!
(二村俊太郎)
[日経MJ 2019年2月11日掲載]