カドカワ、川上氏が社長を引責辞任 後任に松原氏
カドカワは13日、川上量生社長が同日付で取締役に退き、松原真樹専務が社長に昇格したと発表した。同社は同日、位置情報ゲームなどの不振から2019年3月期の連結業績予想を下方修正し、最終損益が43億円の赤字(前期は10億円の黒字)になると発表。従来は54億円の黒字を予想していたが一転赤字転落となり、川上氏が引責し社長を辞任する。経営体制を刷新し、業績改善を図る。
川上氏は1997年にネットサービスのドワンゴを起業した。動画を核にした交流サイト(SNS)を目指して生まれたサービスへの関心が高く、ネット企業の若手経営者として注目を集めてきた。
同氏が07年に本格的に始めた「ニコニコ動画(ニコ動)」は動画の再生中に視聴者のコメントが表示され、お茶の間でテレビを見るような感覚が受け瞬く間に人気が広がった。「初音ミク」などのボーカロイドブームも呼んだ。
14年のドワンゴとKADOKAWAの経営統合の際には、KADOKAWAの角川歴彦会長がドワンゴの川上量生会長(当時)を「天才、川上君」と絶賛、意中の経営者を探し当てたと強調していた。川上氏は15年からカドカワの社長を務めてきた。
一方、カドカワは13日、現在はカドカワの子会社で今回の業績下方修正の原因であるドワンゴの荒木隆司社長が同日付で辞任する人事も発表した。後任社長には元NTTドコモ執行役員で「iモード」立ち上げメンバーでもある夏野剛取締役が就いた。カドカワの松原新社長は13日の決算説明会で、ドワンゴの再建策について「3月までに取りまとめる」と述べた。
また松原社長は、角川歴彦会長や川上氏ら4人が3月から6月までの任期中の役員報酬を自主返上することを明らかにした。川上氏については「(社長を)退いたが非常にユニークな天才的な発明家。今回は失敗したが、タッグは全く変えずに進める」と述べた。
グループ企業の運営体制も刷新する。4月1日付でこれまで出版事業を手がけていた子会社のKADOKAWAに、ドワンゴなどほかの子会社の管理業務を分割。KADOKAWAがグループ企業を管理する体制に変更する。
カドカワの19年3月期の連結最終損益が赤字に転落するのは、ドワンゴのスマートフォン向けゲームの新作や動画サイト「niconico(ニコニコ)」の課金収入が想定を下回るためだ。ドワンゴの固定資産で減損損失37億円を計上するのが響く。
19年3月期の売上高は横ばいの2070億円、営業利益は40%減の19億円を見込む。それぞれ従来予想から240億円、61億円引き下げた。ドワンゴが18年11月に配信したスマホ向けゲームが振るわず、それ以外のゲームも開発が遅れている。ニコニコ動画は回線強化や新サービスでテコ入れをしているが、想定した収入が見込めない。