タイ首相候補に69人 選管が公表 王女は「資格なし」
【バンコク=小谷洋司】民政復帰に向けた総選挙を3月に控えるタイの選挙管理委員会は11日、次期首相候補69人の氏名を公表した。軍事政権と対立するタクシン元首相派の政党が擁立を試みたウボンラット王女(67)を巡っては、「(王室関係者には)政治的な中立性が求められる」として資格を認めなかった。
タイの各政党は最大3人の首相候補をたてて選挙戦に臨む。総選挙後に招集される国会で首相指名選挙をおこなう。各党が推す首相候補の中から、上下両院750人の過半数の票を集めた人物が首相に就く。
資格審査の権限を持つ選管が候補入りを認めなかったことで、王女が首相になる可能性は正式についえた。
軍事政権の事実上の延命をめざす「国民国家の力党」が推すプラユット暫定首相(64)、タクシン派の中核で前与党のタイ貢献党が推すスダラット元保健相(57)やチャチャート元運輸相(52)、民主党のアピシット元首相(54)らは順当に候補リストに入った。
ウボンラット王女の擁立を試みたのは、貢献党と同じタクシン派のタイ国家維持党だった。弟の国王が声明で「いかなる形であれ(王女が)政治に関わることは慣習、伝統、文化に反する。非常に不適切な行為だ」と指摘したのを受け、擁立発表の翌9日には撤回の意向を表明していた。
選管は11日に公表した文書で「王室は政治を超越した存在で、政治的な中立性が求められる。(王女が首相候補になることは)タイ憲法の意図に反する」と指摘。ワチラロンコン国王の意向に沿った判断を示した。
国家維持党を巡っては、親軍政の保守勢力から「王室の政治利用」との批判が出ている。11日には選管に同党の解党処分を求める動きもあり、タクシン派の選挙戦略に影を落とす。11日に公開討論会に出席した貢献党のスダラット氏は報道陣に「貢献党と国家維持党は別々の政党だ」と述べるにとどめた。