巨人・上原、慌てず焦らず歩む43歳の復活ロード
プロ21年目を迎えた巨人の上原浩治が復活を期し、宮崎の春季キャンプで若手に交じって汗を流している。左膝手術からの回復途上にあり、キャンプは2軍スタート。現役最年長投手として迎える開幕に照準を合わせ、慌てず、焦らずに体を仕上げている。
ブルペンに2度入った第1クールは39球と49球を投じた。初めてブルペンで投球した2日は「サンキュー」と、支えてくれた周囲への感謝の気持ちを込め、2度目の投球数には膝がよく(ヨク)なるように、との意味を持たせた。
調子の悪い左膝をかばうよう、だましだましの投球を続けていた右腕は2018年10月、現役続行を目指して手術に踏み切った。オフの間にリハビリや上半身の筋力トレーニング、ランニングや遠投に励んできたものの、マウンドの傾斜を使った本格的な投球練習にはまだ不安もあるようで、細心の注意を払っている。
2日のブルペンでは、左足の踏み出し位置やステップする幅を入念に確認しながら、1球ずつ丁寧に投げ込んだ。後方で見守る木佐貫洋ファーム投手コーチのアドバイスも受けながら、セットポジションだけでなく、体重移動の際に大きな負担がかかるノーワインドアップ投法も交えた。投球練習後には、左膝に十分に体重を乗せる動作を何度も繰り返し「そこ(膝)との戦いになる。気にしないといけない」と慎重な口ぶり。ただ、順調な回復ぶりには「悪くはなっていない」と手応えも得たようで「目指すところは開幕投手」とジョークを飛ばす表情は明るかった。
■「自分の背番号汚さぬように」
日本球界に戻った18年は古巣への復帰決定が3月までずれ込んだため、09年シーズンから米大リーグでプレーしてきた上原にとっては久々の宮崎キャンプだ。「とにかく時期が早い。9年間染みついたものがあるので、それを早く取り除かないと。焦らずにやっていきたい」。新鮮な気持ちで臨む日々は、ファンや自軍の若手選手の好意的な反応をじかに感じとる機会にもなっている。今季から、背番号が大リーグ移籍前につけていた代名詞ともいえる19に戻った。「周囲から『19は上原』と言ってもらえるのはうれしい。自分の背番号を汚さないようにしたい」と大いに発奮している。
勝利の方程式の一角として期待された18年は不本意なシーズンに終わった。7月に日本選手で初めてのトリプル100(通算100勝、100セーブ、100ホールド)をマークした一方で、成績不振による2軍落ちも経験。36試合に登板して0勝5敗、防御率3.63の投球内容だった。
4月に44歳を迎える今季、「1年間1軍にいて、50試合は投げたい」と目標を掲げる。ただ、実績十分の右腕に対して、首脳陣の見方は甘くない。現状を「非常によい方向にいっているんじゃないか」と評価する原辰徳監督だが、1軍での起用には「昨年の数字が特別に優れていたわけではないから、ある程度、結果を残さないと。それは彼もわかっていると思う」と冷静だ。
東京ドームのマウンドに上原が上がれば、本拠地のファンはひときわ熱狂し、後押しする声援はチーム全体を鼓舞する。「負けず嫌い」と「反骨心」を胸に日米の舞台で戦ってきた男が、まだまだチームに不可欠な戦力であることを示せるか。復活ロードに注目だ。
(常広文太)