技術と人材を結集、万博へ総力戦 関西財界セミナーが閉幕
京都市で開かれた「第57回関西財界セミナー」(関西経済連合会、関西経済同友会が主催)が8日閉幕した。2025年に大阪で開く国際博覧会(大阪・関西万博)が決まって初めてとなる今回の会合では、二酸化炭素(CO2)を出さない社会や新たな移動サービスなどイノベーションの重要性を訴える声が相次いだ。関西は技術や人材など総力を結集し、6年後の一大イベントに臨む。
「万博は2040~50年ごろの社会をイメージできる内容にしなければいけない」。岩谷産業の谷本光博社長は強調する。特にCO2を排出しない未来社会に向け、万博会場となる大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)のエネルギーを太陽光や水素で賄う手法を提案。「車やバスはもちろん、水素で走る船が神戸や関西国際空港と夢洲を結ぶ姿を作り上げることが望ましい」と期待を込めた。
発電所運営にドローンや人工知能(AI)を用いるなど、電力事業のデジタル化に言及したのは関西電力の岩根茂樹社長。「オープンなプラットフォームでビッグデータを共有する」ことの重要性も指摘した。
豊田通商の加留部淳会長は「リチウムイオン電池に使うコバルトの最大産出国であるコンゴは児童労働など国情に問題を抱え、万博がテーマとする『持続可能な開発目標(SDGs)』達成への貢献に反する」とみる。「コバルトを使わない蓄電池の開発を進めるか国際的な新しい枠組みを作るしかない」と述べた。
大阪万博は来場者が2800万人と想定され、交通インフラの利便性向上も不可欠だ。JR西日本の二階堂暢俊副社長は鉄道事業者として「移動手段を手軽に手配できるMaaS(マース)の整備が必要だ」と指摘、多言語の情報提供を充実させる重要性も訴えた。
こうした新たな技術やサービスの開発には、優秀な人材の育成が大切になる。NTT西日本の小林充佳社長は「専門性やデジタル思考、経営バランスを持った若者が活躍できる環境を産学が連携して整えるべきだ」と強調した。
セミナーには過去最多の684人が参加。関西同友会の池田博之代表幹事は「万博を常識や規制にとらわれない『未来社会の実験場』とすべく実証実験などを進め、レガシー(遺産)を関西の発展につなげる」などとする宣言を採択した。関経連の松本正義会長は「関西経済の再興や未来社会の創出の条件を十分に考えられた。関係者が一体となって行動に移せば、関西経済は持続成長の軌道に乗る」と総括した。
2025年に開催される大阪・関西万博のニュースや特集をまとめました。参加国やパビリオン、地元の動きなど最新情報をお伝えします。