商社7社の純利益9%減 10~12月 資源高一服、米中摩擦の影響も
丸紅、米国持つ事業で損失リスク
総合商社の業績の伸びが鈍っている。大手7社の2018年10~12月期連結決算(国際会計基準)は純利益が前年同期比9%減少した。2四半期連続の減益だ。資源高の一服に加え米中貿易摩擦の影響がじわりと顕在化する。7日に決算発表した丸紅は米穀物事業で減損損失の計上を示唆した。世界のモノの流れが減速し総合商社の業績に影を落としている。
10~12月期の7社合計の純利益は5775億円で前年同期よりも9%減った。3%減だった7~9月期よりも減益幅は拡大した。3割超の増益だった4~6月期をピークとして時間とともに利益が減少している。
7日、決算を受けて記者会見した丸紅の矢部延弘・最高財務責任者(CFO)は「一部案件の事業環境を踏まえ、資産価値を見直す可能性がある」と説明した。
丸紅の業績は好調だ。10~12月期は建設機械や紙パルプなどが好調で純利益は676億円と12%増加した。4~12月期の9カ月でみると33%増の2196億円で、通期計画に対する進捗率は95%に達した。7社の中で進捗率は最も高く「社内計画を約500億円上回るペース」(矢部CFO)にある。
それでも通期の純利益計画は前期比9%増の2300億円という予想を据え置いた。米国の穀物の集荷事業や海外の電力案件で1~3月期に損失計上の可能性がある。
穀物事業の苦戦は米中摩擦の影響が色濃い。中国が米産大豆などの輸入量を大幅に減らした結果、価格が低迷した。米国の農家が出荷を抑えるようになり、丸紅の穀物集荷量が減っている。穀物など食料部門の4~12月期の純利益は6割近い減益となり、通期の見通しも下方修正した。
貿易摩擦の影響は他社でも見え始めた。三井物産や双日では自動車・電子部品などに使う素材や半導体製造装置の荷動きが鈍った。「以前は目に見える影響は無かった。今は多少、顕在化してきた」と三井物産の内田貴和CFOは話す。
世界の商品市況をみると商社の苦戦が伺える。昨年春以降に銅や穀物の価格がピークアウトし、昨年秋には原油価格が大きく下げた。想定外の事象も含め様々な損失が発生するようになった。
住友商事はマダガスカルのニッケル事業で150億円の損失を計上した。設備の不具合による稼働率の低下とニッケル価格の低迷が主因だ。三菱商事は海外の食品事業で減損を計上した。
米中摩擦や中国景気の減速。世界景気には不透明感が高まっている。相次ぐ損失計上に株式市場では「好調なうちにリスクを織り込み、来期に備えたいのでは」(国内証券)との声も聞こえる。
上半期の貯金もあり今期の純利益はそろって最高益を見込む。決算会見では「予想に対し強含みの内容」(伊藤忠商事の鉢村剛CFO)、「一時的な影響を除けば本業は堅調」(住友商の高畑恒一CFO)などのコメントがあった。ただ、足元の状況は好決算に沸いた半年前と様変わりしており、商社の業績が転換点を迎えた可能性がある。
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