「中国の奇跡」が終わった(大機小機)
「日本の奇跡」がはやされたのは1960年代だった。70年代は「漢江(ハンガン)の奇跡」の韓国に、台湾と香港、シンガポールの「四小龍」が脚光を浴び、しばし遅れて巨龍・中国が離陸した。
昨年12月18日、「改革開放40周年記念大会」で演説した習近平(シー・ジンピン)国家主席は、世界経済に占める中国のシェアが2%未満から15%超に飛躍した40年間を「奇跡」と呼び、さらなる奇跡をなす決意を語った。
だが、その前々日、中国人民大学で講演した経済学者の向松祚(こう・しょうそ)教授が、2018年の成長率を1.67%とはじいた某重要機関の推計値を明かしていた。
1月21日に中国国家統計局が発表した18年の実質成長率6.6%は眉唾だ。四半期ごとに、6.8%→6.7%→6.5%→6.4%と穏やかに減速したというのだ。日本電産の中国需要急減による業績見通し下方修正や、中国で想定以上に販売が落ち込んだ米アップルの決算などと、つじつまが合わない。
米中貿易戦争は一因にすぎず、下振れの根は深そうだ。
英誌エコノミストに昨年末、「中国経済は思ったよりソビエト的」とするコラムが載った。中国の全要素生産性(TFP)の伸びが近年マイナスになっている、という一橋大学のハリー・ウー(伍暁鷹)特任教授らの推計が論拠になっている。ソ連の末期も、TFPがマイナスだった。
生産年齢人口がピークアウトした中国で、生産性の伸びがマイナスでは、潜在成長率が相当落ちているはずだ。成長率を押し上げようと、力まかせに資本を投入すれば、非効率なインフラや不良債権の山を築きかねない。
壮大な投資の失敗を演じたのが80年代の日本だった。バブルの後に企業は、設備・負債・雇用の過剰に苦しみ、経済は長期停滞に迷い込んだ。
今の中国は、平成日本の後を追っているように見える。中国経済のマネーゲーム化に警鐘を鳴らしてきた向教授が最近、上海での講演で「ミンスキー・モーメント」に言及したと伝えられる。資産の投げ売りが始まる瞬間を指す。バブルの崩壊点と言い換えてもいいだろう。
あくまでifだが「その瞬間」が来れば、世界経済への影響はどれほどだろうか。中国の一党独裁体制は無傷で乗り切れるだろうか。
(手毬)
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