女子も選べるスラックス 中学校制服、LGBTに配慮
性別に関係なく自由に制服を選べる公立中学校が増え始めた。埼玉県新座市立第六中学校は1月、スラックスとスカートを自由に選択できる制度を導入。来年度からは東京都中野区なども同様の仕組みを取り入れる。福岡市は男女共通の制服デザインを検討中。学校現場で「性別と服装の不一致」に悩む子供への配慮が進みつつある。
新座市立第六中学校は1月、女子生徒の制服を従来のブレザーとスカートに加え、スラックスを選べるようにした。きっかけは2018年7月の学校指定品検討委員会。保護者から制服について「小学校では女子児童もズボンをはいている。中学校も導入してはどうか」との声が上がった。
学校は同年10月、学区内の小学5~6年生の保護者350人にアンケートを実施。スラックスの導入には350人中195人が賛成した。「どちらでもない」は126人、「反対」は29人で肯定的な意見が半数以上を占め、導入を決めた。
同校ではこれまでスカートの下に体操着の短パンを着る女子生徒もいた。伊藤大輔教頭は「女子生徒からは『動きやすい』『デザインも良い』と好意的な意見が上がっている」と話す。
同様の取り組みは他の自治体にも広がり始めた。東京都中野区は19年春から全区立中学校で女子生徒用のスラックスを用意することを決めた。
区立中の入学を控える小学6年の女児がクラスメートに行った調査がきっかけで、「スラックスをはきたい」という意見が多数となり、区長にスラックス導入を要望した。区内ではすでに10校中5校が選択制を採用していたが、残る5校もスラックスを用意することにした。
福岡市は18年6月から、詰め襟とセーラー服だった市立中の制服に新たな選択肢を加える検討に着手。市教育委員会が設けた有識者会議が、性的少数者(LGBT)に配慮する形で男女誰でも着られる制服デザインを協議している。
19年1月には市内の中学生が4つのデザインの制服を試着し、意見を出し合った。ある女子生徒は「スカートは階段の上り下りでも気になる。自由に選べるのがいい」と笑顔を見せた。早ければ20年度から新制服がお目見えする見通しだ。
文部科学省によると、制服をどうするかは教育委員会や学校長の判断に委ねられている。同省担当者は「制服の選定など校則を決める際は、保護者や子供の意見をよく聞くことが望ましい」と指摘する。15年4月には性同一性障害の児童生徒への配慮を求める通知の中で「自認する性別の制服・衣服や、体操着の着用を認める」取り組みも紹介している。
制服に詳しい京都華頂大の馬場まみ教授(服装史)は「制服に男らしさ、女らしさへの考え方が投影された結果、男子はズボン、女子はスカートという形態が続いてきた。社会で性別への固定的なとらえ方が解消されていくなかで、制服の選択制は広がるだろう」と話す。
制服に合わせるリボンなども自由に選べることが望ましいとしたうえで、「服装は基本的に個人が自由に選ぶべきもので、制服の存在自体も検討の余地がある」とも指摘している。