首相、消費増税「理解と協力を」 施政方針演説
統計不適切調査を陳謝
第198通常国会が28日、召集された。毎月勤労統計の不適切調査問題や、10月に予定する消費税率10%への引き上げが論点となる。安倍晋三首相は28日午後の衆院本会議で施政方針演説に臨み、消費税増税について「国民のご理解とご協力をお願いする」と呼びかけた。厚生労働省による不適切な調査を陳謝し「再発防止に全力を尽くす」と述べた。
演説に先立ち、首相は「予算の早期成立を期し、教育無償化、重要法案の成立をはかって国民の期待に応えていきたい」と首相官邸で語った。
施政方針演説は通常国会の冒頭に首相がする演説で、その年の国政全般に関する基本方針を示した。2012年12月の第2次安倍政権発足後、首相の施政方針演説は7回目。皇位継承と改元を今年5月に控え「平成」最後の演説になる。
首相は冒頭、4月30日に天皇陛下が退位し、翌5月1日に皇太子さまが新天皇に即位することに言及。「国民こぞってことほぐことができるよう、万全の準備を進める」と述べた。「平成の、その先の時代に向かって、日本の明日を共に切り開いていこう」とも呼びかけた。
首相は自ら掲げる全世代型社会保障の実現に「消費税率の引き上げによる安定的な財源がどうしても必要だ」と説明。「(14年の)8%への引き上げ時の反省の上に、経済運営に万全を期していく」と打ち出した。プレミアム付き商品券の発行やキャッシュレス決済時のポイント還元といった景気下支え策を紹介した。
賃金や労働時間を示す毎月勤労統計の不適切な調査については「セーフティーネットへの信頼を損なうものだ。国民におわび申し上げる」と陳謝した。そのうえで「統計の信頼回復に向け、徹底した検証をしていく」と言明した。
自由貿易は「今、大きな岐路に立っている」と指摘した。米中両国の貿易戦争を念頭に「時に保護主義への誘惑を生み出し、国と国の間に鋭い対立をも生み出している」と述べた。日本や中国、インドなどによる東アジア地域包括的経済連携(RCEP)に触れ「野心的な協定になるよう、大詰めの交渉をリードする」と掲げた。
18年の演説で言及した日韓両国の協力強化には触れなかった。韓国を名指しせず「北東アジアを真に安定した平和と繁栄の地にするため、これまでの発想にとらわれない新しい時代の近隣外交を力強く展開する」と表明した。元徴用工訴訟や韓国軍艦による自衛隊哨戒機への火器管制レーダー照射問題を踏まえたようだ。
日中関係は「完全に正常な軌道へと戻った」と説明した。昨年10月に中国を訪れて習近平(シー・ジンピン)国家主席と会談した成果を紹介。「日中関係を新たな段階へ押し上げる」と掲げた。ロシアとは「領土問題を解決し、平和条約を締結する」と明言。「首脳間の深い信頼関係の上に、1956年(の日ソ共同)宣言を基礎として交渉を加速する」と訴えた。
首相が意欲を示す憲法改正は「国会の憲法審査会の場で各党の議論が深められることを期待する」と言明した。18年演説は各党に憲法の具体案を国会に提出するよう呼びかけていた。同年秋の臨時国会などで与野党の憲法論議が進まなかったのが影響したとみられる。
国境を越えた個人や企業の自由なデータ流通の重要性を訴えた。「米国、欧州と連携しながら自由で開かれた国際データ流通網を構築する」と打ち出した。