まだ終わりじゃない 移籍の意思表示は覚悟の上
欧州へ渡ってドイツのシュツットガルトで2シーズン半、マインツで2シーズンを過ごし、英国のレスターに移籍した。移籍で環境を変えることは試合に出る、出られないに関係なく、成長に欠かせない行為だと僕は思う。
レスターで3シーズン半が過ぎ、今の僕は移籍を考えている。出場機会がほとんどない状況で、移籍を口にするのは「負けを認めた」ことを意味するのかもしれない。けれど、自ら行動を起こさなければ、不本意な現状を他人や環境のせいにしそうになる。それでは自分を冷静に見つめる目を失いかねない。そんな状態では、モチベーションを維持するのも難しい。
新しい環境に身を置けば、すべての責任は自分にのしかかる。だからこそ、移籍したいと考える。自分次第で現状は変えられるという気持ちでプレーしたいからだ。
契約が残っている状況の移籍は、僕本人の希望だけでは成立しない。レスターが満足する移籍金を支払うクラブが現れなければならない。英プレミアリーグのハダースフィールドのオファーを、レスターが拒否したという報道が1月に出た。その数日後に相手の監督が解任され、僕へのオファーの行方はさらに不透明になった。
移籍には、新天地に挑戦する覚悟と移籍ができなかった時の覚悟の両方が必要だ。「チームを出たい」と意思表示した選手を起用しようと思う監督は少ない。移籍が未遂に終わり、干された選手を欧州で何人も見てきた。
「そういう状況に陥っても前向きに気持ちを切り替えられるのか? どんなふうに振る舞えるのか?」
そんな自問自答を繰り返して僕は腹をくくった。結果的に残留することになっても、行動したことで気持ちの上では区切りがつくはずだと。
移籍が成立しないのは自分への評価、岡崎慎司という選手の価値が低いということ。自分の力不足が招いた結果だと受け入れ、「価値を上げるために頑張るしかない」とシンプルな気持ちになれる。厳しくても、そういう現実に自分を追い込みたい。
レスターとの契約は今季で満了。その後は移籍金無しになるから、移り先の選択肢は増えるはずだ。
試合に出られない毎日に「選手として成長できなくなる」という不安や焦りはある。しかし、不安はポジティブな力に変えられるし、焦燥感は僕を追い込んでくれる。「もう欧州では限界でしょ。日本に帰ってきたら」と言われたりしたら、それを覆すエネルギーが逆に湧いてくる。
まだ終わりじゃない。冬の移籍市場は1月末まで開いている。欧州での現役生活を僕はまだまだ続けるつもり。3年後のワールドカップ・カタール大会へ向け、今は助走期間だと思っている。
(レスター所属)