名目賃金の伸び下方修正、18年 勤労統計不適切調査
毎月勤労統計で不適切調査があった問題で厚生労働省は23日、2012~18年分の調査結果を修正した。18年1~11月の現金給与総額(名目賃金)の伸びはこれまでの公表値に比べて、最大で0.7ポイント下方修正となった。名目賃金額はすべての月で修正され、ずさんな調査だったことが改めて浮き彫りになった。
毎月勤労統計は働く人の1人あたりの平均賃金や労働時間などを調べる。500人以上の事業所はすべて調べることになっているが、厚労省は04年から約1400ある東京都分を3分の1しか調べていなかった。23日午前に記者会見を開いた雇用・賃金福祉統計室の滝原章夫氏は「ご迷惑をおかけしたことを心よりおわびする」と陳謝した。
従業員数の多い大企業の賃金は中小企業に比べ高い。多くの大企業が調査対象から抜け落ちていたため、これまで公表してきた統計の賃金額は本来より低くなっていた。今回発表した名目賃金の再集計はこれまでの公表値を0.2~1.2ポイント上回った。
18年分の調査から抽出調査を全数調査に近づける復元加工を施していたため、前年と比較した伸びは本来より高くなっていた。再集計した結果、これまでの公表値を0.1~0.7ポイント下方修正した。
18年調査で名目賃金の伸びが最も高かったのは18年6月で、3.3%と21年ぶりの高水準としていた。再集計した結果は2.8%で、0.5ポイントの下方修正になった。
不適切な調査が始まった04年から11年までの再集計値は発表していない。再集計に必要な基資料を廃棄・紛失しているためだ。
不適切調査を調べた特別監察委員会が22日まとめた報告書では一部の資料が保存期限内だったことが分かっている。基資料を探したものの見つかっておらず、厚労省は「今回と同様の手法で再集計値は出せない」と説明した。12年以前の比較はできなくなった。
厚労省が23日発表した18年11月の確報では、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月に比べ、0.8%増だった。増加は4カ月ぶり。物価の伸びが鈍ったためだ。名目賃金は1.7%増の28万5196円だった。