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サッカー界の紛争解決組織が目指すもの

FIFAコンサルタント 杉原海太

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今回は、国際サッカー連盟(FIFA)のコンサルタントの仕事の一つとして、私が関わっている「National Dispute Resolution Chamber(ナショナル・ディスピュート・リゾリューション・チェンバー)」、略してNDRCの話をしてみたい。

FIFAは2001年から既にDRC(ディスピュート・リゾリューション・チェンバー)、日本語に訳せば「紛争解決室」なるものを組織内に設けている。どんなトラブルの相談所かというと、給料の未払い。ほかにもクラブチーム間の係争など、取り扱う案件はあるが、大半が外国人選手とクラブ間の金銭をめぐるもめ事である。

泣き寝入りする選手も

こういう事態に陥ったとき、その国で訴訟を起こす手もあるが、時間や費用がかかることは想像がつく。見知らぬ土地で誰が敵で味方かもよくわからぬまま、法廷闘争を行うのは骨が折れるだろう。

そうこうするうちに契約期間は満了となり、そのクラブを去るときがくることもある。それで他国のクラブに移籍するとか、自国に戻ってプレーすることになると、未払い問題もうやむやになり、下手をすると泣き寝入り。

そういう事態を未然に防ぎ、起きた後は解決にあたるのがDRCというわけだ。DRCはあくまでも中立的な組織で、仲裁人はクラブ側と選手会側が合意した人、クラブ側の代表者、選手会側の代表者で構成される。

給料未払いに遭った選手はDRCに「かくかくしかじか」と書面で訴える。DRCを構成する仲裁人は山積みの案件を一つひとつ話し合い、最終的な決定を下す。訴えの正当性を認めたら、FIFAがクラブに対して支払いを命じる。費用や時間をたいしてかけることなく、迅速に解決できるのがDRCの一番のよさだ。

実は今、FIFAはこのDRCを、各国協会の中に設置するよう勧めている。協会ごとに置くから「ナショナル」が頭について「NDRC」と呼ぶ。動機は外国人選手と当該クラブのような国境をまたぐ紛争はFIFAのDRCで処理するが、国内で選手とクラブが争う場合はNDRCで解決させようと考えているからだ。日本ならJクラブが日本人Jリーガーに対して給料を払わない、遅配する、なんて例は少ないが、世界的には結構大きな問題になっている。それでNDRCの設置を推進している。

昨年12月、タイやインドを含む4カ国のサッカー協会関係者に集まってもらってNDRCの設置を協議した。

そもそも給料の未払いは、プロ契約を交わした選手がいるから起きるのであって、プロ選手やプロリーグのない国では発生しようがない。その中でも特に、タイやインドのようにプロサッカー熱が急激に高まった国ほど、この問題は起こりやすい。大量の資金が急にサッカー界に流れ込み、それまであった相場のようなものが崩れて"バブル"が起きる。それで給料を大盤振る舞いすると未払いという負の側面も出てくる。経営的な基盤が未整備なリーグが普通にたどるプロセスともいえる。

プロリーグを持続的に運営し発展させていくには、お金の「入」ばかりでなく、「出」もきちんと管理しなければならない。「出」の一つに選手の報酬がある。選手に契約通りの支払いができないのは、クラブとして未熟な証拠。DRCやNDRCはそこに目を光らせ、抑止力も効かせる。その趣旨を理解し、タイやインドはNDRCの設置に前向きで協力的だった。

議論しながら問題を顕在化

NDRCの設置は、議論の進め方もユニークだと思っている。「ステークホルダー・エンゲージメント」というFIFAが掲げる新しいやり方と完全に合致しているからだ。

当該国のサッカー協会、リーグ・クラブ、選手会の代表者と、FIFA、FIFPro(国際プロサッカー選手会)、ECA(ヨーロッパ・クラブ・アソシエーション)の代表者が一堂に会する。いわば、ローカル側とグローバル側のフットボールステークホルダーが同じテーブルについて議論しながら問題を顕在化させ、合意できる着地点を探していくのである。

「ステークホルダー・エンゲージメント」の方向性に基づいて、FIFAは一歩引いてファシリテーター(議事進行役)に徹している。NDRCのようなものは各国協会で実際に使われないと意味がないので、自分たちは黒子として、使える形になるまでの議論を後押しするわけだ。

NDRCが広範に普及すれば、世界中のプロ選手の統一契約書に「未払いなどの問題が起きた場合はNDRCで解決を目指す」という一文が盛り込まれる時代がくるかもしれない。また、各国の関係者と話して思うのは、欧州のような権利意識を持たない選手がアジアにはたくさんいるということ。選手会の有無はNDRC設置のスピードにかなり影響するという実感があるが、アジアには選手会すらない国がまだまだ多い。

NDRCの目的は最終的に給料の未払いをサッカー界からなくすことだが、設置するプロセス自体にも深い意味があると私は思っている。たとえば、インドネシアではこの議論がきっかけになって、日本のバスケットボール界のように2つのリーグに分かれていた過去がありながら、フットボールステークホルダーが対話する環境になりつつある。

さまざまな立場の人間が肩書や思想や信条を超えて、建設的な議論をし、知恵を出し合い、より良き社会の実現に向けて努力することを「共創」というのなら、NDRCのプロジェクトはまさにそうだ。私自身、日々学ぶことが本当に多い。

 すぎはら・かいた 1996年東大院修了。コンサルティング会社を経て国際サッカー連盟(FIFA)運営の大学院を2005年に修了。06年からアジア・サッカー連盟(AFC)に勤めた後、14年から現職。FIFAの戦略立案に携わる。

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